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居酒屋での夜
金曜の夜、私は久しぶりに大学時代の友人である健一と居酒屋に来ていた。
焼き鳥の煙が漂い、どこか懐かしい昭和の雰囲気が漂う店内で、私たちは生ビールを片手に他愛もない話をしていた。
「いやー、やっぱりこういう居酒屋の焼き鳥って最高だな!」
「だろ? ここのつくね、マジで旨いんだよ。」
そんな和やかな雰囲気の中、健一がふと真剣な顔になってこう言った。
「そういえばさ、俺、ずっと誰にも話してないんだけど……一つだけ、どうしても忘れられない怖い体験があるんだよ。」
私はビールジョッキを置きながら答えた。
「え、何だよそれ。怖い話か? いいじゃん。聞かせてくれよ。」
健一の語る怖い話
健一はグラスに残ったビールを一口飲み、少し躊躇したように目を伏せた。
「いいけど……あんまり後悔すんなよ。俺自身もこの話を思い出すたびにゾッとするんだ。」
その言葉に、私も自然と姿勢を正した。
健一の体験
「5年前の話なんだけどさ。俺、仕事でちょっと疲れてて、気分転換に車でドライブしたんだよ。夜中だったけど、どっか適当に走れば気が晴れると思ってさ。」
「ほうほう、それで?」
「途中で国道から山道に入ったんだ。道が狭くて街灯も全然なくてさ。周りは完全に真っ暗。ヘッドライトだけが頼りだった。」
健一は焼き鳥を一口かじり、話を続けた。
「で、しばらく進むと、ポツンと古びた自販機があったんだよ。飲み物でも買おうかと思って車を停めた。」
「夜中の山道に自販機? 怖えな、それだけでも。」
「いや、まだここまでは普通だ。飲み物買って車に戻ろうとしたとき、ふと自販機の横に何かが見えたんだよ。」
「何かって?」
健一の声が少し低くなった。
「人だった。いや、人みたいな影。」
不気味な出会い
「それ、人だったんじゃないのか?」
「いや、最初はそう思ったけど、よく見たら全然違った。何て言うか、人の形はしてるんだけど、顔とか手足がぼんやりしてて、輪郭がはっきりしないんだ。」
「……それ、やばいやつだろ。」
健一は頷き、少し声を潜めた。
「俺、もう怖くなってさ、急いで車に戻ったんだ。だけどエンジンがかからないんだよ。」
「マジで?」
「で、焦ってキーを回してたら、フロントガラスの向こうにさっきの影が立ってた。」
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
最後の記憶
「そいつが何か言ったのか?」
「いや……ただ立ってただけ。でも、顔がないのに、こっちを見てるって分かるんだよ。」
「それでどうしたんだよ!」
「もう無我夢中でドアを開けて走った。山道を全力で走ってさ、何とか国道まで戻ったんだよ。」
「それで終わりか?」
「……いや、問題はその後なんだ。」
健一の顔が急に青ざめたように見えた。
「翌朝、車停めたところに行ったら車がなかった。それで、警察に行ってさ、自分の車が盗まれたって届けを出したんだよ。で、その日の午後に車が見つかったって連絡が来た。」
「車が見つかった? どこに?」
健一はしばらく黙り込んだ後、ぽつりと呟いた。
「自販機の横だよ……エンジンがかかった状態で。」
居酒屋の静寂
話を聞き終わった私は、手に持った焼き鳥を口に運ぶのも忘れていた。
「……で、そいつの正体は?」
「分からない。でも、あれ以来、俺は夜中のドライブを絶対にしないようにしてる。」
健一はグラスを空にしながら言った。
居酒屋の賑やかな雰囲気が嘘のように静かに感じられ、私は不思議な寒気を覚えた。
この話を聞いた日以来、夜中に車を運転するたびに自販機を見ると、あの「影」がいるんじゃないかと考えてしまうようになった。
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