怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

居酒屋で語られた“見られている恐怖” 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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「お前、視線を感じるって話、信じるか?」
友人のTが、ジョッキを片手に不意に口を開いた。

「視線? なんだそれ。」
軽く笑って流そうとしたが、Tの表情がどこか真剣だった。

Tの体験談

「あのな、大学時代の話なんだけどさ…。今でも思い出すとゾッとする体験なんだ。」

そう言って、Tは静かに語り始めた。

「当時、俺は大学の近くで一人暮らしをしてたんだ。古いアパートでさ、家賃も安くて居心地は悪くなかった。でも、ある日から、部屋で何かに見られてるような感じがするようになったんだよ。」

「見られてるって、誰に?」

「わからない。でも、背中がぞわぞわする感じがしてさ。最初は気のせいだと思ってたけど、日に日にその感覚が強くなっていくんだ。」

夢の中の影

「ある夜、レポートを書いてたら、背後に気配を感じて振り返った。でも、誰もいない。窓も閉まってるし、鍵もちゃんとかけてる。でもその夜、夢を見たんだよ。」

「どんな夢?」

「俺の部屋のドアがゆっくり開いて、誰かが入ってくるんだよ。姿は見えないんだけど、影みたいなものがスーッと入ってきてさ。その影が、俺の机の上を覗き込んで、それからベッドの方に近づいてきたんだ。」

「それ、怖すぎるだろ。」

「ああ、めちゃくちゃ怖かったよ。そいつがベッドの横に立って、俺の顔をじーっと見下ろしてきたんだ。目が合った…ような気がしたけど、そいつには目なんてなかったんだよ。」

現実の異変

「その日以来、部屋で奇妙なことが起き始めたんだ。机の上のペンとか、微妙に位置が変わってたり、冷蔵庫の中の飲み物が減ってたり。最初は疲れてるのかと思ったけど、どうにも気味が悪くてさ。」

「それ、誰か入ってきたんじゃねえの?」

「鍵はちゃんとかけてたし、部屋の中を調べても何もなかった。だけど、一番怖かったのは、ある夜に起きたことだな。」

カーテン越しの視線

「その夜、電気を消してベッドに入ったら、窓のカーテン越しに何かが動いてるのが見えたんだよ。明らかに人影みたいなものが、カーテン越しにじっと立ってた。」

「お前の部屋、何階だったんだっけ?」

「3階だよ。窓の外に立てるわけがない。それなのに、影は確かにそこに立ってたんだよ。」

「それ、どうしたんだ?」

「怖すぎて、布団を頭までかぶって震えてたよ。翌朝、カーテンを開けたけど、もちろん何もなかった。でも、それ以来、その影は現れなくなった。」

居酒屋での余韻

Tの話を聞き終わると、僕はなんとも言えない気分になった。居酒屋の賑やかな喧騒が、どこか遠くに感じられる。

「お前も気をつけろよ。視線を感じたら、無理に確認しない方がいい。」

Tの言葉に、僕は曖昧にうなずいたが、その夜、自分の部屋で窓を閉めるときに、妙な寒気を感じたのは確かだ。



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