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奇妙な雲との出会い
私がこの話を聞いたのは、高校時代の親友・雄太からです。彼は自然が好きで、よく写真を撮るのを趣味にしていました。その中でも特に雲の写真を撮るのが得意で、彼のSNSには美しい雲の写真がいつも投稿されていました。
「雲ってさ、実はすごい奥が深いんだよ。形や色、動きで天気がわかるし、時には変わった形をしたものもあって面白いんだよ。」
そう熱弁する雄太に、私は「ふーん」と流していました。でも、ある日を境に、彼は「雲なんてもう見たくない」と言うようになったのです。
不気味な雲の出現
それは、私たちが高校を卒業して数年後のこと。久しぶりに雄太と会って飲んでいる時、彼がポツリと話し始めました。
「なあ、雲ってさ……見てると時々、妙に怖い気持ちになることないか?」
「怖い?いや、そんなこと考えたこともないけど。」
彼は少し迷ったような顔をしてから、言葉を続けました。
「実は、1年前の夏、すごく不思議な雲を見たんだよ。」
その日、雄太は山奥のハイキングコースで写真を撮っていたそうです。澄み切った青空に、ぽっかり浮かぶ白い雲。それを眺めながら、カメラを構えていたとき、空に異様な雲が現れたと言います。
「その雲、最初は普通の積雲みたいだったんだけど、だんだん形が変わり始めて……」
「どんな形に?」
「人の顔に見えたんだよ。しかも、じっと俺を見てるみたいだった。」
雲に囚われる視線
雄太はその雲が気味悪くて、写真を撮ろうとしたものの、カメラを向けると手が震えてうまくシャッターを切れなかったと言います。そして、ただその雲を見つめているうちに、周囲の音がまるで消えたように静まり返ったそうです。
「まるで、雲に引き込まれそうな感じがしたんだよ。俺の名前を呼んでる気がして、思わず『何だよ!?』って叫んでた。」
「名前を呼ぶって、それは……気のせいじゃないのか?」
「かもしれない。でも、あの時は本当にそう感じたんだ。それから怖くなってその場を逃げたんだけど……帰り道で奇妙なことが起きたんだ。」
雲に続く影
帰り道、雄太は背後に何かの気配を感じたそうです。振り返ると、青空に浮かぶ雲が自分を追いかけてくるように見えたと言います。
「追いかけてくる雲なんてありえないけど、本当に俺の進む方向に合わせて動いてるように見えたんだ。」
家に帰り着く頃には、夕焼けが空を染めていました。その雲はもう見えなくなっていたものの、雄太の心には不安が残ったままでした。
消えた人々の噂
その後、雄太は雲について調べ始めました。そして、ネットで「雲が原因で消えた人々」という奇妙な噂を見つけたのです。
「ある地域では、不思議な雲を見た後に行方不明になる人がいるらしい。その雲は“呼ぶ雲”って呼ばれてるみたいなんだ。」
雄太が読んだ記事には、「呼ぶ雲を見てしまうと、次第にその雲に執着するようになり、最後には姿を消してしまう」と書かれていたそうです。
「俺が見た雲がそれだったのかは分からない。でも、あの日以来、俺は雲を見るのが怖くなった。」
雲の写真が見せたもの
話の最後に、雄太はスマホを取り出し、一枚の写真を見せてくれました。それは彼が例の不思議な雲を見た翌日に撮ったものでした。
「これ、昨日撮った普通の空の写真だと思うだろ?」
私は画面を覗き込みました。青空に浮かぶ何の変哲もない雲の写真……のはずが、よく見ると、奥の方に微かに人の顔のような形が浮かんでいました。
「これ、俺の見間違いかな?」
「……いや、そうかもしれないけど、気味悪いな。」
その後の雄太
それ以来、雄太は雲の写真を撮ることをやめてしまいました。そして、私もそれ以来、雲を見るとき、どこかに顔のような形が浮かんでいないか無意識に探してしまいます。
「もし奇妙な雲を見つけたら、あんまりじっと見ない方がいいぞ。それが呼ぶ雲だったら、戻れなくなるかもしれないからな。」
雄太のその言葉が、私の心に今でも深く残っています。
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