目次
【プロローグ】
都会の喧騒を離れ、一人で静かに過ごせる場所を求めて、私は山奥の温泉旅館に泊まることにした。
ネットで見つけたその旅館は、古くから営業している老舗で、口コミでは「落ち着ける」「静寂が心地よい」と評判だった。写真で見る限り、建物の雰囲気も趣があって好感が持てた。
しかし、その温泉旅館で過ごした一夜は、私の人生で最も恐ろしい体験となった。
【山奥の旅館】
旅館は山道を車で進んだ先にひっそりと佇んでいた。夕方に到着すると、外観は写真で見た通り、木造の立派な建物だった。
玄関には女将らしき中年女性が立っており、穏やかな笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。本日はご宿泊ありがとうございます。」
チェックインを済ませ、案内された部屋は広々とした和室で、窓からは山の景色が一望できた。
「静かでいいな…。」
都会の喧騒とは無縁の静けさに、私はほっと一息ついた。
【静まり返る館内】
夕食を済ませ、温泉に入ろうと浴衣に着替えて部屋を出た。廊下を歩いていると、館内が妙に静まり返っていることに気づいた。
「他のお客さん、いないのかな…?」
チェックインの際、館内が静かだとは感じていたが、それにしても物音一つしないのは不自然だった。
大浴場に向かうと、そこにも誰の姿もなかった。
「まあ、一人でゆっくり入れるならそれはそれでいいか。」
温泉に浸かりながら、日頃の疲れを癒していると、ふと背後に気配を感じた。
振り返ったが、そこには誰もいない。
「気のせいか…。」
少し気味が悪くなり、早めに湯から上がることにした。
【奇妙な足音】
部屋に戻る途中、廊下を歩いていると、後ろから誰かの足音が聞こえてきた。
コツ…コツ…コツ…
振り返ると、廊下は薄暗く、誰の姿も見えない。
「…誰かいるのか?」
声を上げたが返事はなかった。足音もピタリと止んだ。
気味が悪くなり、急いで部屋に戻った。
【部屋での異変】
部屋に戻ると、ふと妙な違和感を覚えた。
「…何かが違う。」
荷物や布団の位置は変わっていないが、空気がどこか冷たく重い。まるで部屋の中に誰かがいるような感覚だった。
気を紛らわそうとテレビをつけたが、砂嵐の画面が映るだけだった。
その時、部屋の障子越しに人影がスーッと通り過ぎた。
「誰だ…?」
急いで障子を開けたが、誰もいない。
【深夜の足音】
その夜、布団に入って眠ろうとしたが、どうしても気配を感じて眠れなかった。
深夜になると、廊下から再び足音が聞こえ始めた。
コツ…コツ…コツ…
しかも、今度は部屋の前で足音が止まった。
布団の中で息を殺していると、襖の向こうから微かな声が聞こえた。
「…開けて…」
小さな、しかし確実に聞こえるその声に、全身が凍りついた。
【最後の訪問者】
恐る恐る襖に近づき、手を伸ばして開けたが、そこには誰もいなかった。
その代わり、床には水滴がポタポタと垂れており、まるで濡れた足で歩いた跡のようだった。
その瞬間、背後で布団がガサリと動く音がした。
振り返ると、布団の中から何かがゆっくりと這い出してくる影が見えた。
「うわっ!」
私は部屋を飛び出し、廊下を全力で走った。
【翌朝の旅館】
夜通しロビーで震えていた私は、朝になると薄気味悪い女性が現れた。
その女将さんらしき女性にすべてを話した。
だが、女将は驚いた様子もなく、静かに言った。
「ここはもうずっと、泊めてないですよ。閉業しています。」
「でも、昨日チェックインしたじゃないですか!」
私がそう言うと、女将は微かに微笑んでこう続けた。
「それ、誰に案内されたんでしょうね…?」
【エピローグ】
急いで荷物をまとめて旅館を後にしたが、帰り道で振り返ると、そこにはボロボロに朽ちた廃墟があるだけだった。
あの夜、私が泊まったのは何だったのか――いまだに答えを知ることはできない。
もし、静かな温泉旅館に泊まる際は、その静けさの理由を考えることをおすすめする。それが誰のための場所なのか、きっと知りたくないだろうから…。
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