目次
【プロローグ】
私が子供の頃、実家の押入れには、家族の誰も触れない大きな箱が置かれていた。古びた桐の箱で、祖母が生前、大事にしていたものらしい。
「その箱にだけは触っちゃダメよ。」
母に何度もそう言われていた私は、気になりながらも手を出さなかった。だが、あの箱の中に何が入っていたのかは、いつも気になっていた――大人になり、その実家を片付けることになるまでは。
【実家の整理】
両親が亡くなり、私が実家を整理することになったのは、30代になってからだった。
広い家に一人で入ると、どこか重苦しい空気が漂っている気がした。家具や古い写真、もう使われていない食器を整理していく中で、私はとうとう例の押入れに手を伸ばした。
「…これがあの箱か。」
子供の頃から見慣れていた桐の箱。その表面は薄っすらと埃を被り、長い年月を感じさせた。
母の言いつけを破るようで少し後ろめたい気持ちもあったが、私はそっと蓋を開けた。
【中にあった日本人形】
箱の中には、一体の日本人形が収められていた。
黒い艶やかな髪に、鮮やかな赤い着物。小さな顔には繊細な筆使いで描かれた目鼻立ちがあり、その目はじっとこちらを見つめているようだった。
「これが…あの箱の中身だったのか。」
人形の作りは美しく、芸術品と言ってもいいほどだったが、その目の奥に何か生気のようなものを感じ、不意に鳥肌が立った。
【人形を持ち帰る】
その人形を捨てることも考えたが、どこか捨てることができないような気がして、私は一旦アパートに持ち帰ることにした。
部屋の棚の上に飾ると、日本人形はどこか不自然なほど周囲に溶け込んで見えた。しかし、その夜から、奇妙な出来事が起き始めた。
【夜中の違和感】
人形を持ち帰った初日の夜、私は何度も目を覚ました。理由は分からないが、誰かに見られているような感覚が拭えなかった。
そして朝起きてみると、棚の上に置いていた人形の向きが、微妙に変わっていることに気づいた。
「風のせいか…?」
そう思い、気にしないようにしたが、その翌日も、また翌日も、人形は少しずつ向きを変えていた。
【奇妙な音】
さらに不可解だったのは、夜中に聞こえる音だった。
カタ…カタ…
まるで棚の上で人形が動いているかのような音が聞こえるのだ。
「気のせいだ…。」
自分にそう言い聞かせ、眠りにつこうとするが、その音は耳から離れない。
【恐怖の真相】
ある日、耐えきれなくなった私は、人形をじっくり観察することにした。
人形を手に取ると、その目がどこか違和感を覚えさせるものだった。ただのガラス玉ではなく、まるで本物の瞳が埋め込まれているかのような生々しさがあった。
「…これは何だ?」
私は背中に汗がにじむのを感じながら、人形の裏側を調べた。すると、着物の裏に小さな紙切れが縫い込まれているのを発見した。
その紙には、古い文字でこう書かれていた。
「我ヲ返セ」
【人形の呪い】
私は慌てて母の遺品の中を漁り、祖母の日記を見つけた。その中には、この人形についての記述があった。
「この人形はかつて、近所の神社の祠に奉納されていたものを無断で持ち帰った。」
祖母は、その後人形を手放そうとしたが、持ち出した者には不幸が続いたという。それ以来、箱に収めて家に置き、誰も触れないようにしていたのだ。
【人形を元の場所に戻す】
私はすぐに神社を調べ、その祠を探し出した。そして人形を持参し、神主へ事情をはなし元の場所に戻してもらった。
その瞬間、不思議なことに心の中の重苦しさが消えた気がした。
【エピローグ】
人形を戻した後、奇妙な出来事は一切起きなくなった。
あの人形は、きっとその祠に戻るべき存在だったのだろう。今でもその神社の近くを通るたびに、あの人形の目がこちらを見ている気がする。
もし、どこかで日本人形を見つけたら――それがどこから来たのか、一度考えた方がいい。あなたの手にあるべきものかどうかを。
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