目次
プロローグ
人形には魂が宿る、なんて言葉を聞いたことはあるだろうか。
それは単なる迷信だと思っていた。
しかし、ある一体の日本人形が、私の日常を恐怖に変えた――。
第一章：祖母の遺品
それは、祖母の遺品整理を手伝っていた時のことだった。
和室の押し入れから出てきた日本人形。艶やかな黒髪に紅を引いた小さな唇。紫色の豪華な着物をまとったそれは、美しくもどこか冷たい雰囲気を纏っていた。
「これ、どうする？」
家族と相談の結果、処分するのも忍びなく、私が部屋に持ち帰ることになった。
初めは何もなかった。ただ、机の上に飾り、特に気にも留めていなかったのだ。
だが、その人形が夜中に動き出すようになったのは、それから数日後のことだった。
第二章：動く気配
ある夜、私はベッドで目を覚ました。時計を見ると午前2時。
その時、ふと視線を感じて机の方を見ると、人形の顔が微妙に変わった位置を向いていた。
「……気のせいか？」
だが翌朝、はっきりと気づいた。人形がいつも置いている位置から数センチずれていたのだ。
「まさか……風か？」
そう自分に言い聞かせたものの、不安は募った。
第三章：ビデオで監視
真相を確かめるために、私は部屋にビデオカメラを設置し、一晩中録画することにした。
翌朝、録画した映像を再生してみる。最初のうちは特に変わったことはなかった。
だが、深夜2時を過ぎた頃、人形が微かに動いた。
最初は首がゆっくりと回り、次に胴体が傾き、最終的に机の端まで滑るように動いていた。
「……本当に、動いてる。」
衝撃に打たれながら再生を続けると、人形が突然カメラに近づき、画面いっぱいに映し出された。
その次の瞬間、画面が真っ暗になった。
「カメラを止めた……？」
映像の最後、人形が小さな手を伸ばし、カメラの停止ボタンを押す姿が映っていたのだ。
第四章：燃やす決断
「もう無理だ！」
私は恐怖心に駆られ、その人形を処分することに決めた。
部屋から人形を持ち出し、庭先で燃やす準備を始めた。
新聞紙を敷き、ライターで火を点けると、人形の着物に炎が燃え移った。
じわじわと火が広がり、やがて人形全体を包み込む。
だが、その時だった――。
「ぎゃっ！」
突然、人形から叫び声のような音が聞こえたのだ。
「……今のは、風の音……？」
そう自分に言い聞かせるが、その声は確かに人形から発せられたように聞こえた。
第五章：残された恐怖
人形が灰になるまで燃やし尽くした後、私は胸に重い安堵を抱きながら部屋に戻った。
「これで終わりだ。」
だが、それから数日後のこと。机の上に灰が残されていた。
そこには、小さな手の形をした跡がはっきりと残っていた――まるで、また戻ってくるという警告のように。
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