小学生の頃、私は好奇心旺盛なタイプで、友人の直樹とよく「冒険」に出かけていました。冒険といっても、学校の帰り道を遠回りしたり、自転車で少し遠くの知らない道を探索したりする程度です。それでも、あの頃は新しい景色や発見が楽しくて仕方がありませんでした。
しかし、ひとつだけ忘れられない体験があります。大人になった今でも思い出すたびに背筋が寒くなる、奇妙で怖い出来事です。
目次
ぽつんと立つ家との出会い
それは夏休みのある日でした。私は直樹と一緒に、自転車で家から少し離れた山道を走っていました。昼間でも薄暗いその道は、木々が生い茂り、普段は誰も通らないような場所です。ワクワクしながら進んでいると、ふいに視界の隅に奇妙な家が現れました。
それは、山道の脇にぽつんと立つ古い家でした。木造で屋根はところどころ崩れ、窓ガラスも割れているようでした。明らかに人が住んでいない廃屋です。私たちは目を輝かせました。「探検にぴったりの場所だ」と直樹が言い、私も頷きました。
自転車を木陰に停め、慎重に家へ近づきました。家の周りには草がぼうぼうに生えていて、人が近づいた形跡はありません。でも、なぜかその場所には独特の雰囲気がありました。音が妙に静かで、周りの木々も風に揺れることなくじっとしているように見えました。
家の中へ足を踏み入れる
玄関の扉は鍵が壊れており、簡単に中へ入ることができました。中はほこりっぽく、家具や道具が古いまま残されていました。棚の上には古びた時計や、色あせた写真立てが置かれています。私たちは「これはすごい場所だ」と興奮しながら、中を歩き回りました。
しばらくすると、奥の部屋から「ガサッ」という音が聞こえました。私たちは顔を見合わせ、「何かいるのか?」と小声で話しました。恐る恐る音のした方へ向かうと、突然、黒猫が目の前を横切ったのです。
「うわっ!」
「びっくりした!」
二人で大声をあげると、黒猫は鋭い目で私たちを一瞥し、窓枠から飛び出していきました。
薄気味悪い人形たち
黒猫に驚いた私たちが息を整えていると、ふと隣の部屋で何かが光ったように見えました。気になって部屋に入ると、そこには日本人形やアンティークドールが並んでいました。人形たちは棚や床の上に無造作に置かれ、どれも無表情ながらこちらを見ているようでした。
「なんか、気味悪いな。」
直樹が呟きました。私も同じ気持ちでした。人形たちの瞳がどれも生気を帯びているように感じられ、部屋全体が息をしているような錯覚を覚えたのです。
さらに奇妙だったのは、その部屋だけがやけに綺麗だったことです。他の部屋はほこりだらけなのに、ここだけ床も棚もほとんど汚れていませんでした。まるで誰かがここを管理しているかのようです。
恐怖の瞬間
人形たちを見つめていると、突然、部屋全体がギシギシと軋み始めました。私は直樹を振り返り、「帰ろう」と言おうとしたその瞬間――。
人形のひとつが、かすかに動いた気がしたのです。最初は見間違いかと思いました。しかし、次の瞬間、隣の人形が首を傾け、その隣の人形がカタリと傾きました。まるで波が広がるように、人形たちが一斉にこちらを向きました。
「うわあああっ!」
私は直樹の手を掴み、全速力で家を飛び出しました。後ろを振り返る勇気などなく、ただひたすら自転車に乗って元来た道を戻りました。
あの家は今…
家に戻った私たちは、家族にもこの話をしませんでした。二人だけの秘密にしておこうと約束し、それ以降その山道には近づかないようにしました。
大人になった今でも、あの家のことを思い出すたびに背筋が寒くなります。あの人形たちは本当に動いたのか、それともただの私の錯覚だったのか…。しかし、あの家の中で感じた異様な雰囲気だけは、決して忘れることができません。
地元の友人に話を聞いても、その山道にそんな家があったという話を知る人は誰もいませんでした。それがさらに不気味さを増しています。
あの家は一体何だったのか。私たちは二度と知ることができないのかもしれません。
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