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静かな夜道と足音
私がこの体験をしたのは、去年の秋のことでした。
仕事が長引き、会社を出たのは夜の11時を過ぎていました。家までは徒歩で20分ほど。住宅街を通るルートですが、その日はやけに静かで、人の気配が全くありませんでした。
冷たい風が吹き抜け、足元には無数の枯れ葉が散らばっています。歩くたびに「カサッ、カサッ」と乾いた音が響き、普段なら気にならないその音が、その夜は妙に耳に残りました。
聞こえてくる別の足音
家まであと10分ほどのところで、後ろから「カサッ、カサッ」という足音が聞こえました。
「誰かいるのかな?」と思い、振り返りましたが、そこには誰もいません。街灯の明かりで視界ははっきりしているのに、後ろの道はただの空っぽの通り。
「気のせいかな……」
そう自分に言い聞かせて再び歩き始めると、また同じように「カサッ、カサッ」と枯れ葉を踏む音が後ろから聞こえます。今度はさっきより近い。まるで私の歩調に合わせているような感覚でした。
振り返る勇気が出ない
音が気になって仕方がありませんでしたが、再び振り返るのが怖くなっていました。
「ただの風の音だ」と自分に言い聞かせて足早に歩きます。しかし、足を速めるたびに、後ろの音も速くなります。ついには小走りになるほどでしたが、「カサッ、カサッ」という音も同じ速さでついてきました。
心臓が早鐘のように鳴り響き、体中に嫌な汗が滲みます。家まではもう少し。しかし、その少しが永遠に感じられるほど、恐怖に包まれていました。
足音が消えた瞬間
なんとか自宅の門が見えるところまで来ました。そのとき、後ろの足音がピタリと止んだのです。
振り返るべきか、振り返らないべきか――迷いながらも、背後に何もいないことを確かめたい気持ちが勝りました。
ゆっくりと振り返ると……やはり誰もいません。
ほっとした瞬間、今度は真横の茂みから「カサッ」と枯れ葉を踏む音がしました。すぐ近くです。その音の方向を見ようと首を向けた瞬間――。
近づいてくる何か
茂みの中から、何かがこちらに向かって歩いてきます。人間ではない、低い体勢で四足歩行のように動いている影が、ゆっくりと姿を現しました。
しかし、その「何か」をはっきり見ることはできませんでした。茂みから出てきた瞬間に、街灯が不気味に揺れて光が消えたのです。
私はその場に凍りつき、声も出ません。ただ、足音だけが「カサッ、カサッ」と私の方に近づいてきます。暗闇の中で、何かがすぐそばまで迫っているのが分かるのに、体は硬直して動けませんでした。
家の中での違和感
突然、身体が動くようになり、私は半ばパニック状態で家に駆け込みました。鍵を閉め、明かりをつけて呼吸を整えます。
「気のせいだ、全部気のせいだ……」
自分にそう言い聞かせながら、玄関で座り込んでいました。そのときです。家の中、私の背後で――。
「カサッ……」
あの音が再び聞こえました。
翌朝の異変
恐怖でその晩は一睡もできませんでした。しかし、明るくなって外に出てみても、何も異常はありません。玄関周りも庭も、いつもと同じ静かな朝でした。
「本当に幻聴だったのか……?」
そう思って会社に向かおうと玄関を閉めた瞬間、足元に落ちていたものに気づきました。それは、枯れ葉がぎっしり詰まった小さな袋。まるで誰かが私に「残していった」ようでした。
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