目次
【プロローグ】
成人した今でも、子供の頃に経験したあの出来事は、鮮明に記憶に残っている。
小学5年生の頃、私が住んでいた町は静かで平和だった。犯罪や事故が少なく、どこかのんびりとした空気が漂う小さな町だ。子供たちは放課後に公園で遊んだり、近くの山や川で冒険ごっこをして過ごしていた。
でも、あの日を境に、私たちの平穏な日常は大きく変わった。
【友人の行方不明】
その友達――ケンタは、私のクラスメイトであり、いつも一緒に遊ぶ仲の良い友人だった。ケンタは好奇心旺盛で、何にでも興味を持ち、「冒険」と称して近所の裏山や廃墟に行くのが大好きだった。
ある日の放課後、ケンタと私は2人で近くの裏山に探検に行った。木々が生い茂り、昼間でも薄暗いその場所は、大人たちから「危ないから入るな」と注意されていた場所だった。
「ここ、絶対に面白いものがあるって!」
ケンタが嬉しそうに言ったのを覚えている。
最初は何事もなく進んでいた。落ち葉の感触を楽しみながら、虫取りをしたり、珍しい形をした石を集めたりしていた。
だが、ふと気づくと――ケンタの姿が消えていたのだ。
【必死の捜索】
「ケンタ?」
私はその場で大声で名前を呼んだ。返事はない。
最初は隠れんぼをしているのだと思ったが、何度も叫び、探し回ってもケンタは出てこなかった。周囲は静まり返り、風で揺れる木々の音だけが響いていた。
怖くなった私は、一人で家に帰り、大人たちに助けを求めた。
警察も加わり、裏山一帯で大規模な捜索が行われた。しかし、どれだけ探してもケンタは見つからなかった。
「どこに行ったんだろう…?」
その言葉を口にするたび、胸が苦しくなった。
【奇妙な出来事】
ケンタが行方不明になってから1週間後、私は自宅の玄関に奇妙なものが置かれているのを見つけた。
それは、ケンタが探検の際にいつも持ち歩いていた黄色いリュックだった。
「なんでここに…?」
中を開けると、ケンタが持っていたはずのおやつや水筒、そして山で拾った石がそのまま入っていた。
警察に届け出たが、「誰かが悪戯で置いたのでは」という結論になった。それでも、私はどうしても納得できなかった。なぜなら、そのリュックは私たちが最後に一緒にいた場所――裏山でしか見つけられるはずがなかったからだ。
【更なる異変】
それ以来、私は夜になると奇妙な夢を見るようになった。
夢の中で、ケンタが山の中を歩いている。そして私の方を振り返り、何かを言いたそうな表情をしているのだが、口を動かしても声は聞こえない。
夢の中のケンタは、どんどん山の奥へと進んでいき、最後には見えなくなってしまう。目が覚めると、心臓が激しく鼓動していて、全身が冷たい汗で濡れていた。
そんな夢を何度も見ているうちに、私はある決意をした。
「もう一度、裏山に行こう。」
【裏山での再会】
日曜日の昼間、私は一人で裏山に向かった。恐怖心はあったが、何かに導かれるような感覚で、足を進めた。
夢で見た光景を思い出しながら歩いていると、いつもなら行かない奥の方に、不自然に木々が開けた場所を見つけた。
そこには、古びた祠があった。苔むした石の祠で、誰も近づいた形跡はない。
「こんなもの、今まで見たことなかった…。」
祠の前に立つと、突然冷たい風が吹き抜けた。その瞬間、耳元で誰かの声が聞こえた。
「…助けて…」
間違いなくケンタの声だった。
【結末】
その後、大人たちを連れて再びその祠に行ったが、祠の周囲には特に異常は見つからなかった。だが、それから不思議なことに、私の夢にケンタが現れることはなくなった。
ケンタが本当にどこに行ってしまったのか――いまだに分からない。ただ、あの祠で聞いた声だけは、今でも耳に残っている。
「行方不明」と言えばそれまでだが、ケンタはきっとどこかで私に助けを求めていたのだと思う。
もし、裏山のような場所で不思議な祠や人の気配を感じたら――それは、行方不明者の思いが残る場所なのかもしれない。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

