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風が強い家――その場所に秘められた恐怖の理由 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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田舎の小さな集落にポツンと建っている古い家がある。
その家の周りだけ、異様に風が強いことで有名だった。

隣接する家では穏やかな風が吹いているのに、なぜかその家だけは木々が唸り、常に何かを叩きつけるような音が聞こえる。地元の人々は「あそこには近づくな」と口を揃えて言うが、具体的な理由は誰も教えてくれない。

その家が気になったのは、ある日友人の話を聞いたことがきっかけだった。

「あの家に行ったんだ」

友人の村田は、好奇心旺盛な性格で、地元の噂話を面白がるタイプだった。
ある日、彼は「あの風の強い家に行ってきたんだ」と笑いながら話してくれた。

「お前も見たらびっくりするぞ。本当に風がやばいんだよ! 近づくだけで、髪がぐしゃぐしゃになるくらいな。」

「でもさ、ただ風が強いだけだろ?」

「いや、それだけじゃないんだよ。家の中に入ると、妙なことが起きるんだ。」

その言葉に、興味が湧いた。

訪れた“風の強い家”

ある休日、村田に誘われて例の家に行くことになった。
山道を抜けると、噂通りの家が現れた。傾いた瓦屋根、ボロボロの外壁。まるで長い間誰にも触れられていないかのようだったが、不思議と崩れ落ちる気配はない。

家の周囲だけ、木々が大きく揺れ、乾いた風が髪を乱す。まるでその場所自体が風を生み出しているように思えた。

「入ってみようぜ。」村田は先に玄関の扉を押した。

家の中で感じた異様な気配

家の中は意外にも整理されており、埃っぽいながらも物が散乱しているわけではなかった。
しかし、妙なことに、どの部屋も風が通り抜けているかのような音がしていた。

「これさ、どこから風が入ってるんだろうな?」

窓は全て閉じられているのに、耳元で「ゴーッ」という風の音が聞こえる。
部屋の隅には古い家具や写真が置かれていたが、特に気になるものはない。

「ほら、何もないじゃん。」

そう言った瞬間、ふいに背後から強い風を感じた。振り返ると、閉まっていたはずのドアが大きく開き、廊下の奥に何かが動いたような気がした。

「やめたほうがいい」
村田が奥の部屋へ向かおうとしたときだった。
突然、耳元で「やめろ」と囁く声が聞こえた。

「今、何か聞こえなかったか?」

「いや、何も。」

村田には何も聞こえていないらしい。しかし、その声は確かに風に乗って届いたような感覚だった。

その瞬間、家全体が震えたように感じ、強い風が吹き抜けた。部屋にあった古い写真立てが倒れ、ガラスが割れた音が響く。

最後に見たもの

怖くなった私たちは慌てて家を出た。
外に出ると、風の音は少しだけ静かになっていたが、振り返ったとき、何かが窓からこちらを見ている気がした。

それははっきりとは見えなかったが、人間の形をしている何か――いや、絶対に人間ではないものだった。

村田の変化

その後、村田は家に帰った翌日から体調を崩し始めた。
日に日にやつれていき、数週間後には姿を消した。

村田の家族は「都会に出た」と言っていたが、私の中には何か引っかかるものがあった。あの家で何かを持ち帰ってしまったのではないか、と。

その家には二度と近づくことはなかったが、あの強い風の音と囁き声は、今でも耳の奥に残っている。



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