私は趣味で双眼鏡を使った観察を楽しむタイプの人間だ。山や川、鳥、星などを観察しては、その一瞬を楽しむのが休日の癒しだった。その日もいつもと変わらず、双眼鏡を片手に人気のない山道を散策していたのだが、あの日は何かが違っていた。
目次
奇妙な“道”を発見する
山道を歩いていると、見慣れない分岐点が目に入った。何度も来ている場所なのに、そこには初めて見る道があったのだ。薄暗い道で、草木が生い茂っていて「最近できたのかな?」と思うような不自然さを感じた。
気になった私は、その道へと足を踏み入れた。木々がざわざわと風に揺れ、何かに見られているような感覚があったが、持ち前の好奇心がそれをかき消した。
“異世界”の入口
歩いているうちに道が開け、不思議な景色が広がった。空が紫がかった色をしており、遠くの山は歪んで見え、木々もいままで見たことのない種類ばかりだ。まるで異世界に迷い込んだかのような景色だった。
心臓がドキドキし始めたが、怖いもの見たさで双眼鏡を取り出し、遠くの景色を覗いてみた。すると、双眼鏡越しに見えたのはさらに奇妙な光景だった。
人影のようなものがいる。いや、人に似ているが明らかに“人”ではない。遠くの丘の上に集まり、こちらに気づいたのかどうかもわからないが、何かをじっとしているようだった。服装も妙に古めかしく、顔は奇妙なほど白い。それに気づいた瞬間、寒気が全身を駆け抜けた。
不気味な追跡
私は怖くなり、その場を離れようとしたが、ふと振り返ると先ほど見た人影がこちらに近づいてきているのがわかった。双眼鏡で再び覗くと、彼らはどう見ても普通の人間ではなかった。首が少し長すぎるし、目は真っ黒だ。
「まずい」と思い足早にその場を離れようとしたが、足元の草むらで何かが動いた音がして振り返ると、あの人影がまた一気に近くに迫っている。
双眼鏡の“力”に気づく
恐怖で慌てふためきながら、双眼鏡をもう一度覗いてみると、人影たちは動きを止めてこちらを見ていた。そして何かをつぶやくような声が聞こえた気がした。「…こちらに来た…双眼鏡が…」
どうやら私の双眼鏡が、彼らにとって特別なものらしい。だが、それがどういう意味なのかはわからない。ただ、双眼鏡を手にしている間、彼らは近づいては来ないようだった。
帰還と“忘れ物”
私はそのまま後ろを振り返らずに走り続け、奇妙な道を抜け出して元の山道へ戻った。心臓が痛くなるほど走り続けた後、気がつくといつもの景色が広がっていた。ほっと息をついた瞬間、双眼鏡が手元にないことに気づいた。
どうやらあの道で落としてきたらしい。戻る気には到底なれなかった。双眼鏡を失ったことはショックだったが、それ以上に恐怖が勝った。
後日談――双眼鏡の“代償”
あの日から数日後、別の登山客が山で「古い双眼鏡を見つけた」と話しているのを耳にした。私はハッとしたが、詳しく聞く気にはなれなかった。あの双眼鏡を手にした人が、同じような体験をしていないことを願うばかりだ。
いまだに思う。あれはただの迷い道だったのか、それとも本当に異世界への入口だったのか。二度と確かめるつもりはないが、あの紫色の空と人影たちの冷たい視線だけは、今でもはっきりと目に焼きついている。
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