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ある日突然、ニートになった話――奇妙な世界の仕組み 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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突然の“無職”宣告

会社勤めをしていたある日、朝いつものように出社しようとしたら、何かがおかしかった。

まず、スマホのカレンダーアプリから「仕事の予定」がすべて消えていた。メールを確認しようとすると、会社のアカウントにログインできない。さらに、会社のチャットツールもアクセスできず、同僚の連絡先が消えていた。

「なにこれ、バグか?」

不安になりながらも、とりあえず会社に向かった。しかし、会社のエントランスで社員証をかざしても、扉が開かない。

受付の人に事情を話そうとしたが、怪訝な顔をされた。

「失礼ですが、当社にお勤めの方ですか?」

「は? 毎日ここで働いてるんですが?」

「ですが、社員リストにはあなたの名前がありませんよ?」

そんなはずはない。毎日ここで仕事をしていたのに、なぜか私は会社の「存在しない社員」になっていた。

銀行口座と身分証明

とにかく、身元を証明しようと会社を出て銀行へ向かった。しかし、そこでさらなる異変に気づく。

「申し訳ありませんが、こちらの口座は存在しないようです」

銀行の窓口でそう告げられた。

「いやいや、昨日ATMでお金を下ろしたばかりなんですが! 確認してください!」

窓口の人は困った顔をしていた。身分証を提示しても、データがないという。試しにクレジットカードを使おうとしたが、カードは無効化されていた。

そう、私は社会的に「無職」どころか「存在しない人間」になっていたのだ。

住んでいたはずの家が…

おかしなことは続く。帰宅しても、家の鍵が開かない。

「どうなってるんだ……」

管理会社に電話をしてみるが、「その物件にお客様のお名前は登録されていません」と言われた。隣人に声をかけても、「どちら様ですか?」と不審な目を向けられる。

まるで私は、この世界から消されたかのようだった。

“ニート”という肩書き

途方に暮れ、スマホで自分の名前を検索してみた。しかし、SNSのアカウントも、仕事の実績も、何もかもが消えていた。

そして、その代わりに見つけたのが、ある「公式サイト」だった。

「ニート認定制度」

そこには、自分の名前と顔写真が載っていた。そして、その横にはこう書かれていた。

「この人物は、職業・財産・身分証明をすべて失い、完全なニートとして登録されました。」

「は……?」

何の冗談だ? そんな制度があるはずがない。

だが、試しに「ニート認定制度」を調べてみると、どうやらこの世界では、「一定の基準に達すると、強制的にニートになる制度がある」らしい。

基準は明かされていないが、いくつかの掲示板では、同じように「急に無職になった」という体験談が書かれていた。

「ニートの街」への招待

その夜、私は見知らぬ番号から電話を受けた。

「ニート認定、おめでとうございます。あなたは正式に、“ニートの街” への移住が可能になりました。」

「は?」

「詳細は後ほどお伝えしますので、案内人をお待ちください。」

電話が切れた瞬間、部屋の電気がふっと消えた。

そして、ドアの向こうからノックの音が響いた。

コン…コン…

私は恐る恐るドアを開けた――。



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