目次
プロローグ：奇妙な求人
「お前、まだ働いてねえの？」
久しぶりに会った大学時代の友人、田中が呆れた顔で俺を見た。
「いや、別にいいだろ。親の金で暮らしてるし」
俺はもう三年近くニート生活を続けている。特に働く理由もないし、面倒ごとは避けたい。
田中はため息をつくと、スマホの画面を俺に見せた。
「これ、お前にピッタリじゃね？」
画面には 「在宅ワーク！誰でもできる簡単な仕事！未経験歓迎！」 と書かれた求人広告が表示されていた。
よくある怪しい求人かと思ったが、報酬は異常だった。
「1日作業で30万円」
「……詐欺だろ、これ」
「俺もそう思ったんだけどさ、試しに応募してみたんだよ」
田中はそう言ってスマホをいじり、メール画面を見せた。
「おめでとうございます！採用が決まりました。作業内容は明日メールにてお送りします」
「な？ 意外と本物っぽいだろ？」
俺は適当に頷いたが、正直どうでもよかった。
「ま、俺もニート卒業するわ」
そう言って田中は笑った。
それが、田中を見た最後だった。
消えた友人
数日後、田中からの連絡がぱったりと途絶えた。
LINEを送っても既読にならない。
「まあ、仕事に夢中になってるんだろ」
そう思っていたが、妙な違和感があった。
田中の家に行ってみたが、誰もいない。
郵便受けには数日分の新聞が溜まっていて、明らかに帰ってきていない様子だった。
なんとなく不気味に思いながら、俺は田中が応募した求人のページを探してみた。
しかし、どこを探しても見つからない。
URLを入力しても 「ページが存在しません」 のエラーメッセージが出るだけだった。
俺も応募してみた
「なんかおかしい……」
田中はどこに行った？
まさかとは思ったが、俺は同じような求人を探し、応募してみることにした。
すると、数時間後に返信が届いた。
「おめでとうございます！採用が決まりました。作業内容は明日メールにてお送りします」
田中が受け取ったのと、まったく同じメールだった。
そして翌日、さらにメールが届いた。
「作業内容：自宅で待機してください」
……待機？
俺は意味が分からず、ただそのまま過ごした。
訪問者
夜になった。
何も起こらない。
「やっぱり詐欺だったか？」
そう思っていた矢先、玄関のインターホンが鳴った。
ピンポーン……
ドアの覗き穴を覗いてみた。
そこには―― 田中が立っていた。
「田中！？ お前、どこ行ってたんだよ！」
慌ててドアを開けようとする。
だが、開ける前に、ふと違和感を覚えた。
田中は 無表情 で、まばたきひとつしていなかった。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「お前も、来るんだよ」
その瞬間、俺のスマホが震えた。
画面を見ると、たった一言だけメッセージが届いていた。
「迎えに行きました」
そこで意識が途切れた。
目覚めた場所
目を覚ますと、俺は知らない部屋にいた。
壁も床もすべて白。
窓はなく、ドアもない。
唯一あるのは、一台のパソコンだけだった。
画面にはこう表示されていた。
「作業を開始してください」
俺は、田中がどこにいるのかも分からないまま、その画面を見つめ続けた。
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