怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

消えたニートの部屋 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

俺は30代のニートだ。

毎日、特にやることもなく、親の脛をかじりながらネットを眺めて過ごしている。働こうという気力もないし、別にこのままでもいいかなと思っている。

そんな俺の唯一の楽しみは、匿名掲示板で「ニート仲間」と会話することだった。

ある日、俺はいつも利用している掲示板の「無職・ニートスレ」で、ある書き込みを見つけた。

「部屋ごと消えたい」

ネットではよく見る愚痴だ。俺も似たようなことを思うことはあったが、その書き込みにはどこか奇妙な違和感があった。

【奇妙な書き込み】

その投稿者のハンドルネームは「カズオ」だった。

カズオはスレの常連で、俺と同じように長年ニート生活を送っているらしかった。よく「外に出るのが怖い」とか、「時間の感覚がなくなる」といった書き込みをしていた。

しかし、その日からカズオの書き込みはどこかおかしくなっていった。

「なんか、俺の部屋が変なんだよ。」

「何が変なんだ?」と他のスレ住民が聞くと、カズオはこう答えた。

「部屋のドアを開けると、知らない場所に繋がってる。」

【異世界の部屋】

「また厨二病かよ」

そう思いながらも、俺はカズオの書き込みを読んでいた。

カズオによれば、ある日部屋のドアを開けると、そこは見たことのない景色だったらしい。

「外に出たら、隣の家が消えてた。」

「いやいや、そんなわけないだろ」と誰かがツッコんだが、カズオは続けた。

「でも、本当におかしいんだよ。窓の外を見ても、いつもの景色じゃない。灰色の空、知らない建物、見たことのない道路。」

スレ住民の誰もが「釣りだろ」と言ったが、カズオはそれでも書き込みを続けた。

「部屋の中にいるときは普通なんだけど、ドアを開けた瞬間、世界が変わってるんだ。」

【部屋ごと異世界に?】

俺は半信半疑だったが、カズオの書き込みは日に日にエスカレートしていった。

「もう何日も経った気がするけど、カレンダーの日付が変わらない。」

「食べ物も減らない。水も止まらない。でも、外には誰もいない。」

「ゲームのやりすぎじゃね?」と誰かが書き込んだが、カズオは無視して続けた。

「もう分かったよ。俺の部屋は世界から切り離されたんだ。」

「意味が分からん」

そう思っていたが、次の書き込みを見た瞬間、ゾッとした。

「みんなの部屋って、ちゃんと繋がってる? ドアの向こう、ちゃんと現実?」

【カズオの消失】

それを最後に、カズオは書き込まなくなった。

最初は「釣りネタに飽きたんだろ」と思っていたが、カズオが突然いなくなってから、スレ住民の間で奇妙なことが起こり始めた。

「俺の部屋の外、いつもと違う気がする…」

「気のせいかもしれないけど、隣のアパートの窓、全部真っ暗なんだよな。」

「外に出たら、妙に静かすぎる…誰もいない気がする。」

俺も、妙な違和感を感じるようになっていた。

部屋を出るとき、ふと不安になる。

「ここは本当に俺の知っている世界なのか?」

【そして、俺の異変】

カズオが消えてから1週間後。

俺の部屋でも異変が起こった。

朝、いつものようにPCをつけて掲示板を開こうとしたが、ネットに繋がらない。スマホの電波も圏外になっていた。

「なんだよ、Wi-Fiの調子悪いのか?」

そう思いながら、部屋のドアを開けた。

次の瞬間、全身が凍りついた。

そこにあったのは、見知らぬ風景だった。

【異世界の空】

外は一面の灰色。

道路も建物も、見たことのないデザインをしていた。窓から見える景色も、いつものアパートの駐車場ではなく、奇妙にねじれたビル群が広がっている。

「嘘だろ…?」

慌てて部屋に戻り、ドアを閉める。心臓がバクバクと鳴る。

再びドアを開けてみると――

景色は変わらなかった。

カズオの言っていたことは、本当だったのか?

【エピローグ】

それから、俺はずっと部屋の中にいる。

ネットも繋がらず、スマホも圏外のまま。だが、不思議なことに、食べ物も水も尽きることはない。

カズオの言葉を思い出す。

「俺の部屋は世界から切り離されたんだ。」

これがどういう現象なのかは分からない。ただ、一つだけ確かなことがある。

俺の部屋は、もう現実とは繋がっていない。

そして、最後にこれを読んでいるお前に聞きたい。

「お前の部屋、ちゃんと現実に繋がってるか?」



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