目次
フリーマーケットで見つけた古いおもちゃ
俺は特にオカルト好きでもないし、霊感があるわけでもない。ただ、あの日以来、おもちゃに対する認識が変わった。
それは、友人と訪れたフリーマーケットでのことだった。
「これ、懐かしくね?」
友人が手に取ったのは、ゼンマイ仕掛けの人形だった。レトロなデザインで、ぜんまいを巻くとカタカタとぎこちなく動く仕組みらしい。
「めっちゃ古いな……でも、なんか可愛い」
値段を見ると、たったの300円。面白半分で買うことにした。
その選択が、間違いだった。
深夜に響く異音
その夜、寝る前に何気なく人形のゼンマイを巻いてみた。
カタカタ……カタカタ……
ぎこちない動きが妙に不気味だったが、すぐに動きは止まった。
「まぁ、こんなもんか」
特に気にすることなくベッドに入った。
――カタカタ……カタカタ……
深夜、妙な音で目が覚めた。
「……え?」
部屋の中に響くのは、明らかにゼンマイ人形の音だった。
でも、おかしい。
俺はゼンマイを巻き切ったはずなのに、なぜ動いている?
ベッドから起き上がり、おそるおそる人形を見る。しかし、それは床の上に転がったまま、ピクリとも動いていなかった。
「……気のせいか?」
寝ぼけていたのだろうと自分に言い聞かせ、再び眠りについた。
ささやく声
それから数日間、毎晩のように「カタカタ……カタカタ……」という音が聞こえた。
そのうち、何かがささやくような声まで聞こえるようになった。
「……みつけた……」
ゾッとして飛び起きる。しかし、部屋には俺しかいない。
ゼンマイ人形は、相変わらず床に転がっているだけだった。
「やばいな、疲れてるのか……?」
気味が悪くなり、翌日、フリーマーケットで買った人形を捨てることにした。
ゴミ袋に入れ、しっかりと封をする。
「もう関係ない」
そう思い、安心して眠りについた――はずだった。
戻ってきた人形
翌朝、目を覚まして驚いた。
人形が、俺の枕元に置かれていたのだ。
「……嘘だろ?」
確かに昨日、ゴミ袋に入れて捨てたはずなのに。
誰かのイタズラか? いや、そもそも部屋には俺しかいない。
その時、耳元で聞こえた。
「まだ……いっしょ……」
瞬間、全身が総毛立つ。
そのまま人形をつかみ、外へ飛び出した。
おもちゃの正体
恐怖に駆られながらも、フリーマーケットで人形を売っていた店主の元を訪ねた。
「ああ、それ……変なこと起きてない?」
店主は、俺の話を聞く前にそう言った。
「実は、何度捨てても戻ってくるんだよな。その人形。」
「……もともとどこから来たのかも分からないんだ。ただ、手放そうとすると戻ってくる。まるで、持ち主を選んでるみたいにな。」
俺は絶句した。
「どうすれば、捨てられるんですか?」
「さあな。でも、一つだけ聞いたことがある。“本当に望んでいる持ち主に渡せば、戻ってこない”ってな。」
人形を託す相手
俺は考えた。
誰なら、この人形を「本当に欲しい」と思うだろうか?
そして、思い出した。
昔、俺の祖母が人形好きだったことを。
「……もしかして」
俺は意を決して、祖母の家へ向かった。
「おばあちゃん、これ……もらってくれない?」
祖母は、目を輝かせた。
「まあ、可愛らしい人形ねえ……! いいの?」
祖母は、人形を大事そうに抱えた。
その夜から、「カタカタ……」という音は、ぱったりと聞こえなくなった。
その後
数ヶ月後、祖母の家を訪れた俺は、ふと聞いてみた。
「おばあちゃん、人形、どう?」
「ああ、あれねぇ……なんだか夜になると、カタカタ動くのよ。」
俺は凍りついた。
しかし、祖母は微笑みながらこう言った。
「でも、なんだか懐かしくてねぇ。まるで昔の友達と過ごしてるみたいで、寂しくないのよ。」
それを聞いたとき、俺は初めて、あの人形が「本当の持ち主」に辿り着いたのだと確信した。
それ以来、人形は戻ってきていない。
だが、今でも祖母の家では、夜になると「カタカタ……」という音が響いているらしい――。
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