怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

ゴミの中に混ざるもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は清掃業の仕事をしている。主にビルやオフィスの清掃を担当し、夜間に働くことが多い。仕事は単調だが、特に危険なこともなく、給料も悪くない。

しかし、あるビルの清掃を担当するようになってから、奇妙な出来事が起こるようになった。

いつも落ちている「何か」

そのビルは、都心にある古いオフィスビルだった。昼間は普通の会社員が働いているが、夜になると誰もいなくなり、私の仕事が始まる。

いつも通り廊下や部屋を掃除し、最後にゴミを回収するのだが――必ず、あるものが落ちていることに気づいた。

それは、小さな紙片や、くしゃくしゃに丸められた紙くずだった。

最初は気にしなかった。しかし、毎日同じ場所――4階の廊下の隅にそれが落ちているのだ。

ビルの利用者がゴミを落としていくのだろうと思いながら、毎晩掃除を続けていた。

だが、ある夜、私は何気なくその紙を広げてみた。

そこには、黒いインクで「みつけた」と書かれていた。

増えていくメッセージ

気味が悪かったが、誰かのいたずらだろうと深く考えなかった。

しかし、それ以降、紙くずの内容が少しずつ変わっていった。

「みている」
「もっとちかく」
「しってるよ」

誰がこんなことをしているのか。もしかすると、ビルの利用者の誰かが夜中にこっそり仕掛けているのかもしれない。

そう思って、翌日、管理人に相談した。

「このビル、夜間に誰か出入りしてることってあります?」

管理人は首を振った。

「いや、警備システムもあるし、誰も入れるはずないよ。」

だとすると、一体誰が……?

カメラに映るもの

私はその日、4階の清掃を終えた後、試しにスマホのカメラをセットして録画を仕掛けてみることにした。

自分が掃除している間、誰かが紙を置いていくのではないか――そう思ったのだ。

1時間ほど作業を終え、スマホを回収して映像を確認した。

最初の30分間、何も異常はなかった。

しかし、その後――映像の中で、紙くずがゆっくりと床に落ちる瞬間が映っていた。

誰もいないはずの廊下で、空中から紙がスッと落ちてきたのだ。

私は思わずスマホを手から落としそうになった。

その紙には、こう書かれていた。

「みつけた」

まるで、それが私に向けられたメッセージのようだった。

最後のメッセージ

それから数日間、私はそのビルでの清掃を続けていたが、紙は相変わらず落ちていた。

内容は、次第に具体的になっていった。

「うしろ」

その言葉を見たとき、私は思わず背後を振り返った。

誰もいない。

しかし、その瞬間――肩を、誰かに掴まれた感触がした。

「……っ!」

私は悲鳴を上げ、逃げるようにビルを後にした。

翌日、私は仕事を辞めた。管理人には「体調が悪くなった」とだけ伝え、もうあのビルには近づかなかった。

ゴミと一緒に捨てられたもの

それからしばらくして、偶然あのビルのことをネットで調べる機会があった。

すると、数年前にそのビルで起きた事件の記事を見つけた。

4階の元オフィスで、1人の社員が突然姿を消したという内容だった。

失踪した彼のデスクには、無数の紙くずが散らばっていたという。

もしかすると、あの紙くずは……彼が残したものだったのだろうか?

それとも、彼が消えた理由を知っている「何か」が、私に何かを伝えようとしていたのだろうか?

ただ一つ確かなのは――あのビルの4階には、何かがいる。

そして、それは今もなお、誰かに見つけてもらうのを待っているのかもしれない。



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