怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

ゴミ捨て場の異変  怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は都内のアパートで一人暮らしをしている。

仕事は忙しく、帰宅するのはいつも深夜。部屋は散らかりがちで、ゴミを捨てるのも面倒でつい溜め込んでしまう。

そんな生活をしていたある日、私はゴミ捨て場で奇妙な違和感を覚えた。

それは、何気なくゴミを出しに行った、ある夜のことだった。

【ゴミ捨て場での違和感】

私のアパートのゴミ捨て場は、建物の裏手にある。普段は何の変哲もない場所だが、その日は何かが違っていた。

異様なほどゴミが少ない。

いつもならコンビニの袋や空き缶、壊れた家電などで溢れているのに、その日はたった一袋しか置かれていなかった。

しかも、そのゴミ袋が妙に膨らんでいる。

「誰かが大量に詰め込んだのか?」

そう思いながらも、私は自分のゴミ袋を置き、その場を後にした。

だが――。

アパートの階段を上がる途中で、後ろから微かにビニールが擦れる音が聞こえた。

「カサ…カサ…」

「風か?」

そう思ったが、風なんて吹いていなかった。

嫌な予感がして振り返ると――さっきのゴミ袋が、少しだけ動いた気がした。

【翌朝の異変】

翌朝、出勤前にゴミ捨て場を覗いてみた。

しかし、前夜に置いたはずのゴミ袋はなくなっていた。

「回収、もう来たのか?」

そう思いながら視線を落とすと、昨日見た膨らんだゴミ袋だけがまだそこにあった。

違和感を覚えながらも、そのまま会社へ向かった。

【深夜の訪問者】

仕事が終わり、いつものように深夜に帰宅した。

疲れた体を引きずるように玄関のドアを開けた瞬間――。

「カサ…カサ…」

耳元で、あの音が聞こえた。

「え…?」

驚いて振り返ったが、そこには誰もいない。

だが、部屋の前に――。

あの膨らんだゴミ袋が置かれていた。

【ゴミ袋の中身】

「…誰のイタズラだ?」

不気味に思いながらも、私はゴミ袋をつま先で軽く突いた。

すると、中身が柔らかく沈んだ。

何かの塊が入っている――。

私は恐る恐る袋の端を開いた。

その瞬間、血の気が引いた。

中には、無数の人間の手が詰め込まれていた。

指先は微かに動いており、まるで何かを掴もうとするかのように蠢いている。

「カサ…カサ…」

今度は、袋の中から音がした。

【逃げられない】

私は恐怖で体が動かず、ただじっと袋を見つめていた。

すると――。

袋の中の手が、一斉にこちらへ向かって伸びてきた。

「うわぁぁぁ!!」

反射的に袋を蹴り飛ばし、部屋の中に駆け込んでドアを閉めた。

鼓動が異常なほど速くなる。

ドア越しに何かが這いずるような音が聞こえる。

「ゴト…ゴト…カサ…カサ…」

まるで、ゴミ袋の中身が外へ出ようとしているかのように。

【翌朝の消失】

翌朝、意を決してドアを開けた。

しかし、そこには何もなかった。

ゴミ袋も、這いずる音も――すべてが消えていた。

ただ、玄関の前には無数の黒い手形が残されていた。

【エピローグ】

それ以来、私はゴミを出すたびに注意するようになった。

だが、それからしばらく経ったある日――。

深夜、アパートの廊下で、またあの「カサ…カサ…」という音が聞こえた。

振り向くと、ゴミ捨て場の隅にあの膨らんだゴミ袋が置かれていた。

そして、袋の隙間から覗く手が――ゆっくりと、こちらを指差していた。

「捨てたのは、お前だろう?」



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