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捨てても消えないゴミ――終わらない掃除の恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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片付けても片付けても

俺は最近、引っ越したばかりのワンルームで一人暮らしを始めた。

仕事が忙しく、部屋の掃除を後回しにしていたせいで、気づけばゴミがたまっていた。

「さすがにそろそろ片付けるか……」

そう思い、掃除を始めたのだが、どうにもおかしい。

床に落ちているコンビニのレシートやお菓子の袋をゴミ箱に入れたはずなのに、ふと振り向くと、さっき捨てたはずのゴミがまた床に落ちている。

「……ん? 俺、ちゃんと捨てたよな?」

勘違いかもしれないと思い、再び拾ってゴミ箱へ。

けれど、少ししてもう一度振り返ると、また同じ場所に落ちていた。

「なんだよ、これ……」

背筋に薄ら寒いものを感じながらも、ゴミをまとめ、しっかりとゴミ箱のフタを閉じた。

これで大丈夫なはずだった。

夜中に響くカサカサ音

その夜、ベッドに入った俺は、なかなか寝つけずにいた。

すると、部屋の隅からカサカサ……カサカサ……と、ビニール袋が擦れるような音が聞こえてきた。

「……ネズミでもいるのか?」

そう思いながら電気をつけ、部屋を見渡す。

しかし、何もいない。

気のせいかと思って再び布団に入る。

カサカサ……カサ……

「……は?」

確かに聞こえた。しかも、今度は明らかにゴミ箱の方から。

恐る恐る立ち上がり、ゴミ箱のフタを開けた。

ゴミが、すべて元の位置に戻っていた。

部屋の隅の何か

ゾッとした俺は、ゴミを袋に詰め込み、今度こそ部屋から完全に出そうと決めた。

しかし、ゴミ袋を持ち上げた瞬間、部屋の隅の方で何かが動いた気がした。

「……誰かいるのか?」

そう言いながら視線を向けると、部屋の角――そこには何もないはずなのに、まるで何かがこちらを見ているような感覚があった。

全身が粟立つ。

俺はゴミ袋を引きずるように持ち、玄関へ向かった。

ドアを開け、外に出た瞬間――

「カサ……」

背後で、部屋の中から何かが動く音がした。

俺は二度と後ろを振り向かず、全力でゴミを捨てに行った。

それは何だったのか

意を決して部屋に戻ると、部屋のゴミはすべて消えていた。

まるで最初からゴミなんてなかったかのように、床も、ゴミ箱も、綺麗になっていた。

しかし、ひとつだけ気になることがあった。

部屋の隅に、何かが立っていたような黒いシミが残っていた。

それ以来、俺はどんなに忙しくても、部屋を散らかさないようにしている。

あれがゴミに執着していたのか、それとも、ゴミを通して俺に近づこうとしていたのか――今となっては知るすべもない。



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