怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

川沿いの道で聞こえる声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は大学生の頃、地方の小さな町に住んでいた。

町の中心を流れる川は穏やかで、春には桜が咲き誇り、夏には子どもたちが水遊びをする。

私もよく、その川沿いの道を自転車で走ったり、散歩したりしていた。

しかし、ある夜――私はそこで決して忘れられない出来事を経験することになる。

【深夜の川沿い】

その日、私は友人と飲み会をした帰りだった。

終電を逃し、仕方なく自転車で帰ることにした。

川沿いの道を通れば、最短距離で帰れる。

夜の川沿いは静かで、虫の鳴き声だけが響いていた。

街灯は少なく、辺りは薄暗い。

「早く帰ろう…」

そう思いながらペダルを漕いでいると、ふと川の方から奇妙な音が聞こえた。

「…たすけて…」

一瞬、風の音かと思った。

だが、明らかに誰かの声だった。

【川に立つ人影】

私は自転車を止め、川の方を見た。

川の中央に、黒い人影が立っていた。

「……?」

人が立てるような浅瀬ではない。

それなのに、その影は動かずに、じっとこちらを見ていた。

私は急に恐怖を覚え、逃げるように自転車を漕ぎ出した。

しかし――その瞬間、背後ではっきりとした声が響いた。

「おいでよ」

【異常な冷気】

全身が鳥肌で覆われた。

私は振り向かずに必死に自転車を漕いだ。

だが――妙なことに気づいた。

寒い。

夏の夜なのに、まるで冬のような冷気が背後から迫ってくる。

「おいでよ……一緒に……」

声はだんだん近づいてくる。

私はもう何も考えられず、全速力でペダルを漕ぎ続けた。

【家に帰ったはずなのに】

ようやくアパートにたどり着き、玄関のドアを閉める。

「…なんだったんだ、あれ。」

震える手でスマホを取り出し、時刻を確認すると――深夜3時。

飲み会が終わったのが夜11時頃だったから、遅くとも12時半には帰れるはずだった。

「……時間が合わない。」

私は、川沿いで何時間も何をしていたのか?

【翌日の新聞】

次の日、私はコンビニで買った新聞を開き、血の気が引いた。

『川で男性の遺体発見』

記事には、昨夜の深夜2時頃、私が見た場所で溺死体が見つかったと書かれていた。

「……まさか。」

昨日、私が聞いた声は――溺れた人のものだったのか?

もしあの時、あの声に答えていたら……私も同じ場所で発見されていたのだろうか?

【エピローグ】

それ以来、私は夜の川沿いを通ることをやめた。

しかし、あの日以来、時々夢に川が出てくる。

夢の中で、私は必ずあの川のほとりに立っている。

そして、対岸に誰かが立っている。

黒い影のような何かが、じっとこちらを見つめながら――。

「おいでよ……次は、ちゃんと来てね?」



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