数年前、私は転職を機に都内で一人暮らしを始めた。古いけれど家賃が安いアパートを見つけ、即決で契約した。
特に事故物件でもなく、周囲の環境も悪くなかった。ただ、入居初日から妙な違和感があった。
目次
違和感の正体
荷物を運び終え、一息ついたとき、部屋の中に自分のものではない違和感を覚えた。
家具の配置は自分で決めたはずなのに、どこかしっくりこない。窓のカーテンの隙間が、まるで誰かが手で開けたように感じられたり、ドアの立て付けが妙に重かったりする。
「まあ、古いアパートだからな……。」
気にしないようにして、その日は早めに寝ることにした。
しかし、夜中にふと目が覚めた。
部屋の空気が、昼間と違って重く感じる。
聞こえてくる音
翌日から、私は夜になると小さな音が聞こえるようになった。
それは、部屋の片隅から聞こえるカリカリ……という爪で何かを引っ掻くような音だった。
最初は壁の向こうにいるネズミかと思ったが、よく耳を澄ませると、音の位置が少しずつ移動していることに気づいた。
まるで、部屋の中をゆっくりと這い回っているような感覚。
怖くなった私は、布団をかぶって必死に眠ろうとした。
変わる部屋の様子
数日が経つと、さらに奇妙なことが起こった。
物の配置が、わずかに変わっている。
例えば、テーブルの上に置いていたリモコンの向きが変わっていたり、玄関の靴の位置が少しずれていたりする。
はじめは「自分が無意識に動かしたのだろう」と思っていた。
しかし、ある日、私は決定的な異変を目の当たりにした。
誰が座った?
その日、帰宅して部屋の電気をつけた瞬間、私は凍りついた。
ソファのクッションが、誰かが座ったかのように凹んでいた。
もちろん、部屋には誰もいない。
気のせいだと自分に言い聞かせながら、そっとクッションを持ち上げ、元に戻した。
しかし――
翌朝、目を覚ますと、クッションがまた同じように凹んでいた。
まるで、夜の間に誰かがそこに座っていたかのように。
最後の違和感
不安になり、不動産屋に問い合わせた。しかし、やはり過去の住人に関する情報は特に問題はないという。
「気にしすぎか……。」
そう思うことにして、仕事で疲れた私は、その日は深く眠った。
しかし、夜中にふと目を開けると――
ソファの方向に、人の気配を感じた。
闇の中で、はっきりとは見えないが、そこに「何か」がいると分かった。
私は恐怖で体を動かせず、目を閉じて朝が来るのを待った。
引っ越しと残されたもの
結局、私はその部屋をすぐに引き払い、別のアパートに引っ越した。
そして、引っ越しの日、部屋を掃除していたとき、押し入れの奥から古びた小さな木の札を見つけた。
そこには、かすれた字でこう書かれていた。
「ここにいる」
その瞬間、私は全身の毛が逆立つのを感じ、札をゴミ袋に入れた。
部屋を出るとき、ソファをちらりと見たが――
やはり、クッションには誰かが座った形のままのくぼみが残っていた。
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