目次
迫りくる台風と静けさ
その年の秋、記録的な勢力を持つ台風が日本列島を縦断するというニュースが連日流れていた。
僕は在宅勤務のサラリーマンで、マンションの7階に住んでいる。
外出する必要もなかったので、台風が来る日は自宅で静かに過ごすつもりだった。
台風が近づく前日、外は不気味なほど静かだった。
嵐の前の静けさ、というやつかもしれない。
しかし、その静けさには、どこか説明できない違和感があった。
不思議なノック音
夜、激しい風と雨が窓を叩き始めた。
ガタガタと揺れる窓ガラス、唸るような風の音。
僕はカーテンを閉め、テレビの音量を少し上げて気を紛らわせていた。
その時、「コン、コン、コン…」 と、玄関のドアをノックする音がした。
最初は気のせいかと思った。
こんな台風の夜に、誰が訪ねてくるはずがない。
だが、再び――「コン、コン、コン…」
今度は確かに聞こえた。
恐る恐るドアスコープを覗いたが、誰もいない。
不安になりながらも、チェーンをかけたまま少しだけドアを開けて外を確認した。
すると、足元に小さな紙袋が置かれていた。
奇妙な紙袋の中身
紙袋を部屋に持ち帰り、中を確認すると、古びた木彫りの小さな人形が入っていた。
まるで誰かが手作りしたような粗雑な人形だったが、なぜか不気味さを感じる。
付箋のような紙が貼られており、そこにはこう書かれていた。
「この人形を窓辺に置いておいてください」
意味がわからず、気味が悪かったが、好奇心と台風の不安もあって指示通り窓辺に置いてみた。
窓の外で起きた異変
その夜、猛烈な風が吹き荒れ、窓ガラスが割れるのではないかと思うほどだった。
だが、不思議なことが起こった。
人形を置いた窓の前だけ、まるで無風地帯のように風が穏やかになったのだ。
他の窓はガタガタ揺れているのに、その窓だけはピタリと静まり返っていた。
翌朝、台風一過の青空の下で外を確認すると、近隣の家々は被害を受けていた。
倒れた木、壊れたフェンス、割れた窓ガラス…。
しかし、僕の部屋だけがまるで守られていたかのように無傷だった。
再びのノック
その夜、再び「コン、コン、コン…」 というノック音が響いた。
恐る恐るドアを開けると、今度は誰かが立っていた。
それは、薄汚れたレインコートを着た中年の男性だった。
彼は静かに言った。
「人形、ありがとうございました。おかげで守ることができました。」
そう言うと、深々と頭を下げ、紙袋を持って立ち去っていった。
僕は何も理解できなかった。ただ、彼が去った後、不思議と心が穏やかになった。
人形の痕跡
翌日、もう一度窓辺を見ると、そこには人形の形だけがほこり一つない状態で残っていた。
まるで最初から存在していなかったかのように。
あの男性が誰だったのか、あの人形が何だったのかはわからない。
ただ一つ言えるのは――
「あの台風の日、確かに僕は“何か”に守られていた」 ということだけだ。
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