目次
懐かしい故郷へ
数年ぶりに故郷へ帰省した。
海沿いにある静かな町。子どもの頃はよく友達と波打ち際を走り回ったり、夕日を見ながら語り合ったりした。
社会人になってからは忙しくて、この町を忘れかけていた。
久しぶりに訪れると、潮の香りと冷たい海風が懐かしい感覚を呼び起こす。
「変わらないな、ここは……」
そんなことを思いながら、夜の海沿いを歩いていた。
並ぶ白い影
夜の海は暗く、波の音だけが静かに響いている。
ふと遠くを見ると、何かが海沿いに並んでいるのが見えた。
最初は漁師の人たちかと思ったが、どこかおかしい。
暗闇に溶け込むように、白い影がずらりと並んでいる。
風に揺れる白い布のようなもの。人のような形をしているが、動かない。
怖さよりも好奇心が勝ち、俺はゆっくりと近づいていった。
近づくと見えたもの
影に近づくにつれて、冷たい空気が肌を刺すように感じた。
やがて、それが“人の形”をした白い影であることがはっきりした。
――いや、正確には、人の輪郭だけがそこに存在している。
顔はなく、目鼻立ちもない。ただ、白く淡い輪郭が海岸線に沿って立ち並んでいるのだ。
ゾクリと背筋が冷える。
でも、どこかでこの光景に見覚えがある気がした。
「……懐かしい?」
記憶の奥底で、何かが呼び覚まされる。
忘れていた記憶
ふいに、子どもの頃の記憶が蘇った。
昔、この海沿いで友達と“おまじない”のような遊びをしたことがある。
「夜の海には、帰れなくなった人が並んでるんだって!」
「見ちゃダメだよ!目が合うと連れていかれるんだって!」
そんなふざけた話をしながら、みんなで笑っていた。
……でも、思い出した。
あの時も、確かに“白い影”を見たのだ。
怖くなって、慌てて家に帰った。
けれど、その翌日――一緒に遊んでいた友達の一人が行方不明になった。
ずっと忘れていた。いや、忘れようとしていたのかもしれない。
その瞬間、白い影が――
立ち尽くしていると、その白い影のひとつがゆっくりとこちらを向いた。
顔はないはずなのに、確かに目が合った気がした。
その瞬間、記憶がさらに鮮明に蘇る。
あの時、行方不明になった友達――その顔が、影の中にあった。
「……○○?」
思わず名前を呼んでしまった。
すると、すべての白い影がこちらに向き始めた。
足がすくんで動けない。
ザザァァァ……
波の音が異様に大きく響く。
次の瞬間、気を失った。
翌朝
目が覚めると、俺は海岸の砂浜に倒れていた。
辺りには誰もいない。白い影も、何も。
ただ、足元にあったのは――
子どもの頃になくしたはずの、錆びたおもちゃのキーホルダーだった。
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