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双眼鏡越しに見た「海沿いに並ぶ白い影」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

民宿のオーナーからかりた古びた双眼鏡。

試しに海沿いの景色を覗いてみた。

その瞬間――

肉眼では見えなかったはずの、“白い影”が、ずらりと並んでいるのが見えた。

第一章:古びた双眼鏡

仕事のストレスで疲れていた私は、久しぶりに海沿いの小さな町へ一人旅に出た。

宿泊先は古びた民宿で、オーナーは気さくな老人だった。

「浜辺の景色を楽しむなら、これを使うといい。」

そう言って、オーナーは 古い双眼鏡 を貸してくれた。

真鍮のくすんだフレームに、少し曇ったレンズ。

「壊れてたら教えてくれよ。」

私は礼を言い、そのまま宿の屋上へ向かった。

第二章:肉眼では見えない景色

屋上からは、水平線がどこまでも続く美しい景色が広がっていた。

波の音、潮風の匂い、心が少しだけ軽くなる。

私はさっそく双眼鏡を取り出し、何気なく海岸線を覗いた。

……その瞬間、心臓が凍りついた。

白い人影が、海沿いにずらりと並んでいるのが見えた。

少なくとも 20体以上。

まるで等間隔で立ち並び、全員がこちらを向いている。

しかし、双眼鏡を外して肉眼で確認すると、そこには 誰もいない。

再び覗くと、また白い影が並んでいる。

「……なんだ、これ?」

第三章:影の正体

不気味さを感じつつも、私は好奇心に駆られ、さらに双眼鏡でその“影”を観察した。

近づけて見ると、白い影は 人間の形 をしていることがわかった。

だが、顔がない。

のっぺりとした白い面だけが、じっとこちらを見つめている。

全員が、微動だにせず、ただこちらを向いている。

その時、ふと 影の一つが首を傾けた。

まるで、私の存在に気づいたかのように。

私は慌てて双眼鏡を外した。

すると、再び 誰もいない。

第四章:宿のオーナーの話

気味が悪くなった私は、双眼鏡を持ってオーナーの元へ戻った。

「これ……おかしいですよ。海に……変な影が……。」

オーナーは静かにうなずき、こう言った。

「見えたか。あの双眼鏡でしか見えないものがあるんだよ。」

私は思わず身震いした。

オーナーは語った。

この町では昔、漁師たちが海で命を落とす事故が多発していたこと。

遺体が上がらないまま、“行方不明” となった者たちは、今でも海沿いに並んでいるということ。

「普通は見えない。でも、あの双眼鏡は“境界”を越えてしまうんだ。」

第五章:動き出す影

その夜、私はどうしても気になり、再び双眼鏡を手に取った。

窓から海岸線を覗く。

やはり、白い影たちは並んでいる。

だが――

今度は、少し近づいていた。

昼間は海岸線にいたはずの影が、砂浜の端まで来ている。

さらに、私は気づいた。

一体、足りない。

最初に見たときより、影が一つ消えているのだ。

その瞬間、部屋の外から 足音 が聞こえた。

“コツ、コツ、コツ……”

私は恐怖で固まりながら、ゆっくりとドアの方へ目を向けた。

ドアの隙間から、白い足が見えていた。

結末:双眼鏡の向こう側

翌朝、私はオーナーに急いで話そうとした。

だが、民宿には誰もいなかった。

オーナーの姿も、他の客もいない。

あの双眼鏡だけが、テーブルの上に置かれていた。

ふと、窓の外を見ると――

海沿いに並ぶ白い影の中に、

“私自身”が立っていた。

双眼鏡を通して、今の自分がそこにいる のがはっきりと見えた。



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