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雪の中に見えるもの――双眼鏡の先の事故物件 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「この部屋、事故物件ですよ。大丈夫ですか?」

不動産屋の言葉に、私は気にせずうなずいた。

家賃の安さと立地の良さ。少しくらいの“いわく”なんて、どうでもよかった。

でも今なら、はっきりわかる。

「ここは、住んではいけない場所だった」 ということを――。

第一章:雪の降る町と事故物件

私が新しく引っ越したのは、北国の小さな町だった。

雪がしんしんと降り積もり、夜になると静寂が辺りを包む。

借りた部屋は、少し古いマンションの最上階。

部屋の窓からは、雪原と小さな森が見える。

「景色がいいし、悪くないな。」

そんなことを考えていた。

あの“古びた双眼鏡”を手にするまでは。

第二章:双眼鏡と不自然な景色

引っ越しの片付けをしていると、押し入れの奥から古びた双眼鏡 が出てきた。

前の住人が忘れていったのだろう。

興味本位で、その双眼鏡を手に取り、窓の外を覗いてみた。

雪原は静まり返り、どこまでも白く広がっている。

最初は何も異常はなかった。

しかし、視線を森の方へ向けた瞬間――

「……あれ?」

森の入り口に、誰かが立っている。

白い服を着た、動かない人影。

肉眼では見えない。

でも、双眼鏡越しにははっきりと見えた。

第三章:増える影

次の日、私はまた双眼鏡で外を覗いた。

今度は、二人に増えていた。

やはり、肉眼では見えない。

双眼鏡を通した時だけ、そこに存在している。

まるで、こちらを見つめているような気がした。

それでも、私は気にしないようにした。

事故物件だから、何かあってもおかしくない。

そう自分に言い聞かせていた。

しかし、日を追うごとに “影”は増えていった。

5人、10人、やがて 数え切れないほどの白い人影が、森の前に並ぶようになった。

全員が、じっとこちらを向いている。

第四章:気づいた真実

ある晩、外は猛吹雪だった。

不安な気持ちを紛らわせるように、また双眼鏡を覗いた。

雪の中、無数の白い影が立っている。

しかし――

一人、いなくなっていた。

その瞬間、部屋の玄関から 「コン、コン……」 とノックの音がした。

私は背筋が凍りついた。

ドアを開ける勇気はなかった。

ただ、ノックはずっと続いた。

やがて音が止んだころ、私は恐る恐る双眼鏡を覗き直した。

また一人、影が消えていた。

第五章:雪の足跡

翌朝、私は勇気を出して外へ出た。

吹雪は止み、雪原は一面の銀世界。

しかし、私の部屋の玄関前には、足跡が残っていた。

その足跡は、森の方へ続いている。

私は双眼鏡を持って、もう一度窓から外を覗いた。

そこには、再び並んでいる白い影たち。

でも、今度は違っていた。

“一番手前の影”が、私の服装をしていた。

結末:最後の視線

その夜、再びノックの音が響いた。

「コン、コン、コン……」

玄関を開けることはできなかった。

でも、私はわかっていた。

今度は、私の番だ。

もし、あなたが古い双眼鏡を手にすることがあったら――

決して、雪の中を覗かないでください。

そこに、あなたが立っているかもしれないから。



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