怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

雪の足跡 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その年の冬、私は友人たちと山間の小さなペンションに泊まりに行った。

一面真っ白な雪景色、空気は澄んでいて、夜空には満点の星。温かい暖炉と冷えた空気が心地よく、まさに完璧な冬の旅行だった――あの夜までは。

異変の始まり

夜も更け、雪はさらに降り積もっていた。ペンションの周りは誰も足を踏み入れておらず、まっさらな雪の絨毯が広がっている。

私たちは外で雪遊びをして、疲れた頃に部屋へ戻った。暖炉の火にあたりながらお酒を飲み、気がつけばそのまま寝てしまった。

しかし、夜中にふと目が覚めた。

窓の外が妙に気になり、何気なくカーテンを開けた瞬間――私は凍りついた。

雪に刻まれた足跡

外はまだ雪が降り続いているはずだった。

しかし、ペンションの周りには誰かの足跡がくっきりと残っていた。

しかも、その足跡は私たちの部屋の窓のすぐ下まで続いている。

「……誰かいる?」

部屋の他の友人たちは熟睡している。私は震える手で懐中電灯を持ち、足跡を確認しようとした。

足跡の奇妙な点

外へ出て足跡をたどってみると、奇妙なことに気づいた。

足跡は、一方向にしかついていない。

誰かがペンションに向かって歩いてきた形跡はあるのに、戻った足跡はないのだ。

つまり、その「誰か」は今もこの周囲にいるということだった。

私は慌てて部屋へ戻り、鍵をしっかり閉めた。

再び現れる足跡

翌朝、友人たちにこの話をすると、誰も信じてくれなかった。

しかし、ペンションのオーナーが私たちの話を聞くと、顔色が変わった。

「……またか。」

「え? どういうことですか?」

オーナーは重い口を開いた。

過去の事件

数年前、このペンションの近くで遭難事故があったという。

雪山で道に迷った登山者が、一人だけこのペンションに向かって歩いてきた。しかし、吹雪が強くなり、助けを求める前に力尽きてしまったのだ。

彼の足跡は、やはり一方向にしか残っていなかったという。

「この時期になると、同じ足跡が現れるんですよ。まるで、まだここへたどり着こうとしているみたいにね。」

最後の足跡

私たちはその日、早々にペンションを後にした。

しかし、車に荷物を積んでいるとき、私はもう一度あの足跡を見つけた。

今度は――ペンションの玄関に向かって、はっきりと続いていた。

そして、玄関の前で足跡は突然途切れていた。

まるで、やっと中に入ることができたかのように。



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