目次
古い研究室での出来事
これは、大学時代に体験した奇妙な話です。
理系の学部で、私は主に微生物の研究をしていました。キャンパスの端にある古びた研究棟で、夜遅くまで実験を繰り返す日々。
ある日、教授が倉庫から出してきたのは、古い顕微鏡でした。
「これは特別なものだ。感度が高く、細胞の動きが詳細に観察できる」
教授は誇らしげにそう言いました。
確かに、見たこともないアンティークなデザインですが、レンズはピカピカに磨かれていて、どこか不気味な存在感がありました。
最初の異変
私は新しい試料を顕微鏡にセットし、観察を始めました。
血液サンプルや微生物のスライド。普通なら赤血球や細菌が見えるはずなのに――
何かがおかしい。
最初は気のせいかと思いました。でも、確かに見えたんです。
細胞の間に、“存在するはずのない模様”が蠢いているのです。 それは微生物でも、細胞構造でもなく、まるで極小の「目」のようなものが、こちらをじっと見返している。
不意に背筋が凍りました。
「見られている」――そんな感覚がはっきりと残ったのです。
同じ体験をした仲間たち
研究室の仲間たちにもその話をすると、最初は笑われました。
でも、好奇心旺盛な彼らも次々と覗き込むことに。
数人がその奇妙な“目”を目撃し、みんな口をそろえて「こっちを見ていた」と言いました。
しかし、問題はそこからでした。
覗いた人に起こる異変
その日から、顕微鏡を覗いた仲間たちが奇妙な症状を訴えるようになったのです。
「夜、誰かに見られている気がする」
「眠ると夢の中で、無数の“目”に囲まれている」
「視界の端で、何かが蠢いているのが見える」
最初はストレスや疲労のせいだと片付けました。でも、事態はさらに悪化しました。
ある日、同じ研究室のAが突然、
「もう耐えられない!見られてるんだ、ずっと!」
と叫び、部屋を飛び出して行方不明になったのです。
警察が捜索しましたが、Aは二度と見つかりませんでした。
顕微鏡の正体
私たちは怖くなり、教授にその顕微鏡について問い詰めました。
教授は渋々口を開きました。
「あれは、もともと廃棄された研究施設から譲り受けたものだ。特殊なレンズで、通常の顕微鏡より“深い層”まで観察できるらしい」
“深い層”?
教授はさらに続けました。
「通常の視覚では捉えられない“何か”を映し出すと言われている。だが、それ以上は私も知らない」
私たちはすぐにその顕微鏡を廃棄しようとしました。
しかし――
その顕微鏡は、どんなに捨てても、翌日には研究室に戻ってきていたのです。
最後に見たもの
私が大学を卒業する前の夜、どうしても気になってもう一度だけその顕微鏡を覗いてしまいました。
すると、以前よりも鮮明に“目”が見えたのです。
無数の目がこちらを見つめ、じっと動かない。
……いや、違う。
動かないのではなく、待っているのだ。
顕微鏡のレンズ越しに、私が覗き返すのを。
現在
あれから数年が経ちました。
私は普通に社会人として働いています。
でも――夜になると、ふと視界の隅に小さな“目”が見えることがあります。
まるで、まだ誰かがこちらを覗いているように。
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