怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

ガリガリ 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

夏の終わり、友人の紹介で借りたアパートに引っ越した。

家賃が安く、駅からも近い。内装は古いが、特に気にすることはなかった。

ただ一つ、気になったことがある。

壁に、マジックで小さく書かれていた「ガリガリ」という文字。

最初は、子供の落書きだと思っていた。

でも、それがただの落書きではないことに気づくのに、時間はかからなかった。

第一章:部屋に刻まれた言葉

引っ越し初日、家具を配置していると、壁の隅に小さな文字が目に入った。

「ガリガリ」 と、かすれた字で書かれている。

古い建物だから、前の住人の落書きかもしれない。

気にもせず、そのまま上からポスターを貼った。

しかし、翌朝目を覚ますと――

そのポスターが剥がれていた。

壁を見ると、またあの文字が。

「ガリガリ」

不思議に思いながらも、深く考えずにそのまま仕事へ向かった。

第二章:増えていく「ガリガリ」

数日後、別の壁にも同じ文字を見つけた。

「ガリガリ」

最初の文字と全く同じ筆跡、同じ大きさで書かれている。

おかしい。

私は誰も招いていないし、自分で書いた覚えもない。

気味が悪くなり、消そうとしたが、どんな洗剤でも落ちなかった。

やがて、天井や床にも「ガリガリ」の文字が現れ始めた。

第三章:気づき始めた異変

ある夜、寝ていると誰かの気配 で目が覚めた。

部屋には私一人のはずだ。

しかし、視界の隅に 薄暗い影 が見えた。

心臓が早鐘のように鳴る。

だが、照明をつけると、何もいなかった。

ただ、壁一面に「ガリガリ」の文字が増えていた。

まるで、私が眠っている間に誰かが書き続けていたかのように。

第四章:真実を探る

耐えきれず、私はアパートの管理人に事情を尋ねた。

すると、管理人は顔を曇らせ、低い声で話し始めた。

「……前の住人がね、壁にずっと“ガリガリ”って書いてたんだよ。毎日、同じ場所に。」

理由を聞くと、管理人は少し間を置いてから言った。

「自分の体が“ガリガリ”になっていくのが、怖かったらしい。」

どうやら、前の住人は急激にやせ細り、やがて衰弱して亡くなった という。

彼は最後まで、「ガリガリ」と壁に書き続けていたらしい。

第五章:映る“何か”

その話を聞いた夜、私はふと鏡の前に立った。

頬がこけ、体が少し痩せている気がした。

「……まさか、気のせいだよな。」

鏡に映る自分の姿に、ぞっとした。

首元には、「ガリガリ」と薄く浮かび上がる痕跡 があった。

まるで、誰かに爪でなぞられたように。

結末:終わらない痕跡

私はすぐにアパートを引き払い、別の場所へ引っ越した。

それでも、「ガリガリ」の痕跡は、私の体から消えなかった。

鏡を見るたびに、痩せ細っていく自分が映る。



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