目次
友人の誘いで訪れた川
夏の終わり、私は友人のケンジに誘われて、郊外の小さな川へ遊びに行った。
都心から車で1時間ほどの場所で、地元の人しか知らないような静かな場所だった。
到着すると、川の水は澄んでいて、光が反射してキラキラと輝いていた。
ただ、川の中央あたりにだけ、不自然に黒く濁った場所があった。
ケンジは笑いながら言った。
「この辺、昔から“底なしの淵”って呼ばれてるんだってさ。でも、ただの都市伝説みたいなもんだよ。」
私たちは気にせず川遊びを始めた。
しかし、その“黒い淵”だけは、どんなに強い日差しが差しても暗いままだった。
川遊びの最中に起こった異変
しばらくすると、ケンジがふざけてその黒い淵に近づいていった。
「おーい!底なしの淵、見せてみろよ!」
と叫びながら、石を投げ入れたその瞬間――
「グゥゥゥ……」
どこからともなく、低いうなり声のような音が聞こえてきた。
風が吹いていないのに、川の水面だけがざわざわと波打ち始めた。
私は嫌な予感がして叫んだ。
「ケンジ、戻ってこい!」
しかし、ケンジは動かない。
まるで何かに引き寄せられるかのように、黒い淵をじっと見つめていた。
水面に映る“もうひとりの顔”
私がケンジの元に駆け寄ると、彼の目は見開かれ、硬直していた。
「どうした? おい、ケンジ!」
私はケンジの肩を揺さぶりながら、ふと彼が見つめている水面を覗き込んでしまった。
そこには――
私たちの顔と、“もうひとりの顔”が映っていた。
その顔は歪み、瞳孔のない真っ黒な目で私を見返してきた。
次の瞬間、冷たい手が水面から突き出て、ケンジの足首を掴んだ。
悪霊との遭遇
必死にケンジの腕を掴んで引き戻そうとしたが、異様な力で水の中へと引きずり込まれていく。
私は叫びながら、ケンジの足を引っ張り続けた。
すると――
「帰れ!」
突然、背後からおばあさんの声が響いた。
振り返ると、杖をついた老婆が立っており、川に向かって塩を撒いていた。
老婆の行動と叫び声で、悪霊の手は力を緩め、ケンジはなんとか助かった。
真相と後日談
老婆によると、
その川の黒い淵には、かつて多くの人々が亡くなった歴史があるという。
その怨念が悪霊となり、今も水の底に潜んでいるのだと。
「川は命を奪うものでもある。遊び半分で近づいてはいけないよ。」
ケンジは助かったものの、
あの日以来、彼は水面を見ることができなくなった。
さらに、彼の足首には今も青黒い痣が残っている。
私は、二度とあの川には近づいていない。
しかし――
ふとした瞬間、水面に映る自分の顔の隣に、あの“もうひとりの顔”が映ることがあるのだ。
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