怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

川の微生物 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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大学で生物学を専攻している私は、卒業研究の一環として、地元の小さな川の水質調査を行っていた。川は特に目立つ特徴もなく、どこにでもある普通の流れだった。

しかし、その川で奇妙な生物を発見したことで、私の平凡な研究は予想外の方向へ進んでいくことになる。

採取と初めての観察

ある日、川岸の泥と一緒に少量の水を採取した。研究室に戻り、いつものようにサンプルを顕微鏡で覗き込む。

最初はプランクトンやバクテリアなど、よく見る微生物が確認できた。しかし、ふと視野の端に妙な「動き」があった。

倍率を少し上げて焦点を合わせると、そこには今まで見たことのない微生物がいた。

形は楕円形で、半透明のゼリー状の体。内部には複雑な構造がうっすらと見えるが、細胞核らしきものが複数存在している。何より奇妙なのは、動きが極端に滑らかで、まるで自分で考えて動いているかのようだった。

「……なんだこれ?」

思わず声が漏れた。

異常な成長

翌日、再びその生物を観察すると、驚くべきことが起きていた。

サイズが少し大きくなっている。

通常、微生物は急激に成長することはあっても、ここまで短時間で大きさが変わることはない。しかも、増殖ではなく単体で成長しているのだ。

さらに数日観察を続けていると、その生物は内部構造を変化させ、新たな組織のようなものが形成されていった。

まるで、別の形態に進化しようとしているかのようだった。

奇妙な反応

4日目、私はふとした思いつきで、生物に少量の異なる化学物質を加えてみた。

すると、今までゆっくりと動いていた生物が、突然激しく反応した。

細胞内で何かが爆発するように拡散し、体全体が脈打つように収縮と膨張を繰り返す。

顕微鏡越しに見ているだけなのに、まるで「拒否」しているような反応に見えた。

「おかしい……刺激に対する反射以上のものがある。」

私は恐怖と好奇心の狭間で、さらに観察を続けた。

観察の終わり

6日目、生物は明らかに異常な成長を遂げていた。

もはや単なる微生物とは呼べない。細胞構造は高度に複雑化し、まるで小さな器官の集合体のようになっている。

その夜、私はうたた寝をしてしまい、顕微鏡のライトをつけたままにしていた。

目が覚めてふとプレパラートを見ると――

生物が消えていた。

消えた生物、残る痕跡

プレパラートは割れており、乾いたガラス片の上には黒い痕跡が残っていた。

急いで周囲を探すが、どこにも見当たらない。もちろん、こんな小さな生物が自力で移動できるはずはない。

ただ、一つだけ気になることがあった。

顕微鏡のレンズ部分に、小さなひびが入っていたのだ。

まるで、内側から何かがぶつかってきたかのように。

後日談

その後、私はあの川に再び採取に行ったが、あの奇妙な生物は二度と見つけられなかった。

ただ、あの川の近くで、時折奇妙な現象が報告されていることを知った。

「水面に奇妙な光が浮かぶ」
「川沿いで不思議な音が聞こえる」

それがあの生物と関係しているのかはわからない。

ただ、私は今でも思う。

あの生物は、もしかすると私たちの知らない「進化の途中」だったのかもしれないと――。



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