怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

不思議なチラシ 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ある休日、久しぶりに友人の山田と会うことになった。

特に目的もなく、駅前のカフェでコーヒーを飲みながら雑談をしていた。

「最近、変わったことあった?」

「いや、特にないなぁ。強いて言えば、昨日ポストに変なチラシが入ってたくらい。」

そう言って山田は、折りたたんだチラシをポケットから取り出した。

「なんでも買い取ります!」

目立つ赤文字のタイトルの下に、小さく「骨董品・家具・衣類・思い出の品まで」と書かれている。

普通のリサイクルショップの広告かと思ったが、よく見ると、掲載されている商品写真がすべてモノクロだった。

「……なんか古臭いデザインだな。」

「だろ? でも、妙なのはそれだけじゃないんだよ。」

広告に載っていたもの

山田がチラシを指差した。

「これさ、なんか見覚えない?」

よく見ると、モノクロの写真の中に、どこかで見たことのある置時計が映っていた。

「……あれ? これ、お前の家にあったやつじゃないか?」

そう、これは山田の部屋の本棚の上にいつも置いてあった時計だ。

「俺もそう思った。でも、単なる偶然かもしれないだろ?」

「まあ、確かに似てるだけかもな。」

しかし、その次のページを開いたとき、二人とも息を呑んだ。

そこに掲載されていたのは――

山田の部屋にあるソファ、コート、さらには彼が愛用しているマグカップの写真だった。

過去の記憶を買い取る?

「これ、お前の家のものじゃないのか?」

「……だよな? でも、誰がこんな写真撮ったんだよ。」

チラシには買取店舗の住所や電話番号が載っていたが、ネットで調べてもそれらしい店は見つからなかった。

その後、山田が念のため部屋に戻って確認したが、すべての物はちゃんとそこにあった。

つまり、チラシに載っていたのは、誰かが勝手に撮った写真ではなく、別の方法で「記録されたもの」だったのかもしれない。

最後の一文

チラシを再び見返すと、裏面の端に小さな文字でこう書かれていた。

「あなたの思い出も買い取ります。」

私は背筋が寒くなった。

もし、このまま放っておいたら、山田の記憶の中から、この物たちが消えてしまうのではないか?

あるいは――山田自身が「買い取られる」ことはないのだろうか?

後日談

それから数日後、山田から連絡があった。

「……なあ、お前、俺の部屋にあった置時計、覚えてるよな?」

「もちろん覚えてるよ。なんで?」

「……俺、そんな時計、買った覚えがないんだよ。」



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