目次
目を引く奇妙な広告
その広告を初めて見たのは、通勤途中のことだった。
駅のホームに貼られた大きなポスター。
古びたレンガ造りの建物の前で微笑むスーツ姿の男性と、
その足元に小さく書かれたキャッチコピー――
「新しい世界へ、ようこそ。」
会社名も連絡先も、商品名すらない。
ただ、その言葉と謎めいた写真だけが印刷されていた。
何の広告なんだろう?
不思議に思いながらも、その日は仕事に向かった。
だが、それからというもの、私は同じ広告を街の至るところで目にするようになった。
広がる広告の謎
次に見かけたのは、帰宅途中の電車の中だった。
つり革広告に同じ建物の写真が貼られている。
駅のホームだけでなく、商店街の掲示板、街角の看板、果ては新聞の片隅にまで――
どこを見ても、その広告が目に入るようになった。
しかし、不思議なことに、その広告を気にしている人が誰もいない。
友人に話しても、「そんな広告あったか?」と首をかしげるばかり。
駅の職員に尋ねても、「うちが貼った広告にそんなものはない」と言う。
私にしか見えていないのか?
気味が悪くなったが、同時にどうしても気になった。
そこで、翌日その広告の写真を撮ろうとしたのだが――
カメラに何も映らなかった。
誰も知らない会社
広告には連絡先も住所も書かれていなかったが、
私はポスターに映っていた建物に見覚えがあった。
会社の近くにある使われていない旧倉庫だ。
もしかすると、何かのヒントがあるかもしれない。
翌日、昼休みにその倉庫を訪ねてみた。
しかし、そこには何もなかった。
古びた建物は今にも崩れそうで、何年も使われていないことが明らかだった。
ドアには錆びついた南京錠がかかっており、とても中に入れる状態ではない。
私は、ため息をつきながら建物をあとにした。
しかし、その夜。
会社帰りに再び倉庫の前を通ると、驚くべきことが起きていた。
倉庫の扉が開いていたのだ。
招かれるように
扉の向こうには、明かりが灯っていた。
私は足を踏み入れ、そっと奥へ進んだ。
倉庫の中には、無数のポスターが並んでいた。
どれも同じ広告だった。
壁一面に貼られたポスターが、
こちらを見つめているような錯覚を覚える。
そして、その中央にスーツ姿の男性が立っていた。
広告に写っていた、あの人物だ。
男は静かに微笑んだ。
「新しい世界へ、ようこそ。」
次の瞬間、すべてのポスターが一斉にめくれ上がった。
強烈な風が吹き抜け、私は目を閉じた。
消えた広告
翌朝、目が覚めると自宅のベッドだった。
昨日の出来事が夢だったのか、現実だったのか、判断がつかなかった。
しかし、通勤途中に気づいた。
あの広告が、どこにもなくなっている。
どこを見ても、ポスターは影も形もない。
同僚に聞いても、「そんな広告、最初からなかった」と言う。
私は急いで倉庫へ向かった。
しかし、そこには何もなかった。
いや、正確には「倉庫自体が存在しなかった」のだ。
広告の正体
あの広告は何だったのか?
なぜ私だけが気づき、なぜあの倉庫に招かれたのか?
分からないことだらけだが、ひとつだけ確かなことがある。
それ以来、私の世界は少しだけ違って見えるようになった。
広告の写真は一枚も残っていない。
しかし、私は今でもときどきふと奇妙な視線を感じる。
どこかで、あの広告はまだ誰かを誘っているのかもしれない。
次に見つけるのは――あなたかもしれない。
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