怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

消えない広告 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「この広告、何か変じゃないか……?」

駅の掲示板、新聞の折込チラシ、ポストに入るチラシ。

どこを見ても、同じ広告が目につくようになった。

最初は気にしなかった。

でも、ある日ふと気づいた。

「この広告……俺にしか見えていない?」

第一章:広告がついてくる

仕事帰り、私は駅の掲示板に貼られた広告を何気なく眺めた。

「あなたをお待ちしています。特別な体験を、特別な場所で。」

白黒のぼやけた写真に、何かの建物らしきものが写っている。

場所の説明はない。

店名も、連絡先もない。

ただ、それだけのシンプルな広告。

「何の店だろう?」

特に興味もなく、その日は帰宅した。

しかし、それから数日後――

同じ広告を至るところで見かけるようになった。

電車の中吊り広告
会社のデスクに置かれた新聞の折込チラシ
自宅のポストに入っていた謎のチラシ
どれも、同じ広告 だった。

最初は偶然だと思った。

でも、ある日、職場の同僚に聞いてみた。

「なあ、この広告、最近やたらと見ないか?」

同僚は不思議そうに眉をひそめた。

「……何の話だ?」

「これだよ、ほら。」

私は新聞の広告を指さした。

だが、同僚は怪訝な顔をしたまま、こう言った。

「どこにも広告なんて載ってないぞ?」

第二章:見えているのは自分だけ

同僚だけじゃない。

他の人に聞いても、誰もあの広告を見たことがないと言う。

確かに 駅の掲示板にあったはずの広告は、次の日には消えていた。

「気のせいか……?」

しかし、その日帰宅すると、ポストの中に また同じチラシ が入っていた。

もう一度、じっくりと内容を確認する。

「あなたをお待ちしています。特別な体験を、特別な場所で。」

そして、今まで気づかなかったことに気づいた。

チラシの端に、小さく“日付”が書かれている。

それは――明日の日付だった。

第三章:行くべきか、行かざるべきか

「どういうことだ……?」

広告には、店名も場所も書かれていない。

だが、ふと 自分の頭に“行き方”が浮かんできた。

考えたわけではない。

まるで、誰かに植え付けられたように、自分がどこへ行けばいいのかが、自然とわかる。

「……試しに行ってみるか?」

怖さはあったが、確かめなければ気が済まない。

そう思い、私は広告の導く場所へ向かった。

第四章:広告の場所

翌日、私は広告の示す場所へ向かった。

気づけば、知らない町にたどり着いていた。

駅から離れた、寂れた商店街の一角。

そして、目の前に――

広告に載っていた建物があった。

くすんだ看板、誰もいない通り。

店の名前はないが、「ようこそ」 という文字がドアに貼られている。

恐る恐る中を覗くと、真っ暗だった。

誰もいない。

「……やっぱり、やめよう。」

そう思って引き返そうとした瞬間、

背後から カサリ…… という音が聞こえた。

振り向くと、店の入り口に 新しい広告が貼られていた。

そして、その広告には――

「お待ちしておりました。どうぞ、中へ。」

という文字が追加されていた。

結末:戻れない広告

私は、逃げるようにその場を離れた。

家に帰り、部屋にこもった。

怖くなって、広告は破り捨てた。

「もう、関係ない。」

そう思った。

しかし、翌朝――

新聞をめくると、またあの広告が載っていた。

だが、今度の広告には、こう書かれていた。

「昨日はお越しいただき、ありがとうございました。」



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