久しぶりに実家へ帰省した。
都会での一人暮らしにも慣れ、こうして帰ってくるのは年に一度か二度ほどになってしまったが、実家の匂いや雰囲気は昔と変わらない。
母は相変わらず元気で、帰ってくるなり手料理をたくさん出してくれた。
「ゆっくりしていきなさいね。」
そう言われ、私はのんびりとした時間を過ごしていた。
だが、その夜、妙なことが起こった。
目次
使われていないはずの部屋
夜中、トイレに行こうと廊下に出たときだった。
ふと、祖父が生前使っていた部屋の前を通りかかる。
祖父は数年前に亡くなり、それ以来この部屋は使われていない。
荷物も整理されず、今はただの物置のようになっているはずだった。
だが――
部屋の隙間から、うっすらと明かりが漏れている。
「……え?」
母はもう寝ているはずだし、誰かがいるわけがない。
少し躊躇ったが、恐る恐るドアノブに手をかけた。
祖父の部屋
ギィ……と、静かにドアを開ける。
そこには――
変わらず祖父の部屋があった。
いや、それだけではない。
机には湯呑みが置かれ、座布団は少しだけへこんでいる。
まるで、ついさっきまで誰かがそこに座っていたかのように。
それに、ほんのりお茶の香りがする。
私は息を呑んだ。
確かに、この部屋は何年も使われていないはずなのに。
それとも、母が掃除でもしていたのだろうか?
そう思いながら部屋を出ようとしたとき――
背後で、畳を擦るような音がした。
聞こえたはずのない音
私は慌てて振り返った。
しかし、部屋には誰もいない。
気のせいかもしれない。そう思い、そっと扉を閉めた。
だが、その瞬間――
トン……トン……
内側から、畳を歩くような音が聞こえた。
心臓が跳ね上がる。
気のせいではない。
誰かが、この部屋の中にいる。
慌てて私は足早に自分の部屋へ戻り、布団をかぶった。
母の言葉
翌朝、朝食を食べながら、昨夜のことを母に話した。
「あの部屋、今も使ってるの?」
母は少し驚いた顔をした後、ふっと笑った。
「……ああ、やっぱり気づいたのね。」
「え?」
母はお茶をすすりながら、当たり前のように言った。
「おじいちゃん、まだ普通に生活しているのよ。」
私は、箸を持つ手が止まった。
母の表情は穏やかだったが、その言葉の意味を深く考えたくはなかった。
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