目次
ふと見つけた小さな店
ある日曜日の午後。
僕は何気なく街を歩いていた。
特に目的はない。休日の散歩というやつだ。
商店街を抜け、少し寂れた裏通りを歩いていると、
「ドーナツ屋」 の看板が目に入った。
こんな場所に、ドーナツ屋なんてあっただろうか?
店構えは古く、小さな木の扉に、くすんだガラス窓。
そこに筆で書かれたような文字で、こう書かれていた。
「まぼろしドーナツ」
なんだか気になって、僕は扉を押してみた。
優しい店主と不思議なドーナツ
店の中は、ほんのり甘い香りに包まれていた。
カウンターの向こうには、白髪の優しそうな店主がいた。
「いらっしゃい」
そう言うと、ニコッと微笑む。
ショーケースには、見たことのないドーナツが並んでいる。
「思い出ドーナツ」
「願いごとドーナツ」
「ありがとうドーナツ」
名前の横には、手書きの説明が添えられている。
「懐かしい気持ちになるドーナツ」
「叶えたいことを思いながら食べるといいドーナツ」
「感謝の気持ちが伝わるドーナツ」
何だか怪しい。でも、せっかくだし買ってみることにした。
「おすすめはありますか?」と聞くと、店主はしばらく考えて、
「君には『出会いドーナツ』がいいかもしれないね」
と、丸いドーナツを袋に入れてくれた。
ドーナツがくれた出会い
店を出ると、ちょうどベンチがあったので、座って食べることにした。
一口かじると、ふわっと口の中に広がるやさしい甘さ。
シンプルなのに、どこか懐かしい味だった。
「おいしい…」
そうつぶやいた瞬間――
「そのドーナツ、おいしいんですか?」
ふいに声をかけられた。
驚いて振り向くと、同じベンチに座っていた女性がこちらを見ていた。
「あっ、えっと…」と戸惑う僕に、彼女は笑った。
「実は、私もさっきあのお店で買おうか迷ってたんです」
そう言って、彼女は「まぼろしドーナツ」を指さした。
「おいしいですよ、すごく」
「じゃあ、私も買ってきます!」
そう言って、彼女は楽しそうに店へ向かった。
それが、僕と彼女の 最初の出会い だった。
まぼろしドーナツの正体
彼女とは、それから何度か会うようになり、
やがて付き合うことになった。
「出会いドーナツ」のおかげ――なんて言ったら、
バカみたいに聞こえるかもしれない。
でも、あの店がなければ、僕らはきっと出会わなかった。
ある日、彼女と一緒にまた「まぼろしドーナツ」を訪れようとした。
でも――
そこには、何もなかった。
確かにあったはずの店が、跡形もなく消えていたのだ。
不思議に思いながら、僕たちはそこに立ち尽くしていた。
「あの店、やっぱり "まぼろし" だったのかな?」
彼女がそう言うと、なんだか可笑しくなって、二人で笑い合った。
それ以来、僕たちはドーナツを食べるたびに、あの店のことを思い出す。
そして、少しだけ "運命" というものを信じてみたくなるのだった。
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