怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

仏壇の中の知らない顔 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

実家の仏壇には、亡くなった祖父母の遺影が飾られている。

しかし、ある日帰省したとき、仏壇に見覚えのない顔 の写真が増えていた。

「……この人、誰?」

両親に聞いても、「そんな写真、最初からなかった」と言う。

でも確かに、仏壇の中のその顔は、こちらをじっと見つめていた。

第一章:増えた遺影

久しぶりに実家に帰った日、母が仏壇にお線香をあげていた。

何気なく仏壇の前に座ると、違和感に気づいた。

祖父母の写真の横に、知らない男性の写真 が増えている。

モノクロの古びた写真。

着物姿の男が、じっとこちらを見ていた。

「……この人、誰?」

母に聞くと、怪訝そうな顔をした。

「何言ってるの? そんな写真、最初からないわよ。」

「いや、ここにあるじゃん。」

母は不思議そうに仏壇を覗き込んだが、

「……何もないけど?」

そう言われた。

でも俺には、はっきりと見えていた。

第二章:写真の男

気味が悪くなり、仏壇の前から離れた。

しかし、その夜――

部屋で寝ていると、ふと金属の擦れる音が聞こえた。

「……カチャ……」

実家の床は軋むはずなのに、足音はしない。

誰かが、仏壇の扉を開けている音だけが響いていた。

翌朝、恐る恐る仏壇を見た。

そして、血の気が引いた。

写真の男の表情が変わっていた。

昨夜は無表情だったのに――

今は、微かに笑っている。

第三章:誰の写真なのか

怖くなり、父に尋ねてみた。

「なあ、この家の仏壇って、昔からあったの?」

父は少し考えてから、

「……実はな、もともとこの仏壇は、曽祖父の代に手に入れたものらしい。」

曽祖父がどこかの古道具屋で見つけ、気に入って買ったものだという。

「それって……元々、誰かの家にあったってこと?」

「そうらしい。でも、誰のものだったかはわからん。」

「もしかして、その前の持ち主が……あの写真の男なんじゃないか?」

そう考えたが、両親には写真が見えていないのだ。

俺にだけ見えているものを、どう説明すればいいのか。

第四章:仏壇の中の手紙

その夜、気になって仏壇をじっくり調べることにした。

扉を開けると、底板の隙間に何かが挟まっている。

そっと引っ張り出してみると、それは古びた手紙 だった。

達筆な筆文字で、こう書かれていた。

「申し訳ありません。私は、この仏壇と共におります。
どうか、この家の者たちを見守らせてください。」

筆者の名前は、読めなかった。

しかし、封筒の裏に、あの男の写真が貼られていた。

結末:家の一員

翌朝、俺は仏壇の前に座り、その写真に向かって手を合わせた。

「……ずっと、ここにいるのか?」

もちろん、答えはない。

だが、不思議なことに、それ以来、写真の男の表情は変わらなくなった。

それどころか、妙に落ち着くような気配すら感じる。

もしかしたら――

この家の仏壇は、ただの祖先を祀るものではなく、前の持ち主と共にあるものなのかもしれない。

俺は最後にもう一度、写真を見た。

そして、はっきりと気づいた。

男の顔が、少し祖父に似ている気がした。



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