目次
プロローグ
「ねえ、心理学って面白いよね。」
大学のゼミで、心理学を専攻する友人・佐々木が言った。
「人間の脳って、自分が思っているよりも簡単に操作されるんだよ。」
興味本位で聞いていたが、彼が語り始めたある実験の話 に、俺は背筋が凍った。
第一章:消された記憶
「知ってる? 人間の記憶は、簡単に書き換えられるんだ。」
佐々木は得意げに語った。
「ある心理学の実験で、被験者に架空の記憶を植え付けるっていうのがあったんだ。子供のころに迷子になった記憶とか、動物に襲われた記憶とかね。」
「嘘の記憶を信じ込ませるってこと?」
「そう。でも、それだけじゃない。逆に、『実際にあった出来事』を完全に忘れさせることもできる。」
俺は、その言葉にゾッとした。
「たとえば、ある人間が“存在しなかった”ことにするのも、案外簡単らしいよ。」
「……どういうことだよ?」
「要は、周りの人間の記憶を少しずつ変えればいいんだ。『あの人なんて知らない』って言い続けるだけで、人間は簡単に混乱する。」
「そんなこと、本当にできるのか?」
「もちろん。過去の記憶を曖昧にする方法はいくらでもある。心理学の実験でな。」
「……誰がそんな実験やったんだよ。」
「俺が。」
佐々木は、笑いながら言った。
第二章:消された同級生
「なあ、斉藤って覚えてる?」
突然、佐々木が言った。
「……斉藤?」
「ほら、高校の時、お前と俺と斉藤の三人でよくつるんでたじゃん。」
「……いや、そんなやつ知らないけど?」
「マジで言ってる?」
俺は、本当に知らなかった。
「嘘だろ? ほら、写真とか残ってるだろ。」
スマホを開き、昔の写真を見返してみた。
だが、どこにも「斉藤」というやつはいない。
クラス写真にも、部活の集合写真にも。
「……最初から、いなかったんじゃないのか?」
「いるよ。いたんだよ。お前も、毎日一緒にいたじゃないか。」
佐々木の顔が、さっきまでと打って変わって青ざめていた。
第三章:実験の対象
佐々木は震える手で、自分のノートを開いた。
そこには、びっしりと書かれた心理学の実験記録 があった。
『被験者A(俺)の記憶に変化なし。
被験者B(他の友人)の記憶から斉藤の存在が消えつつある。
被験者C(クラスメイト)は、すでに斉藤の存在を完全に否定している。』
「おい、これって……?」
「俺、やったんだよ。実験を。周りの人間の記憶を操作して、斉藤を“いなかったこと”にする実験を。」
「は?」
「最初は、簡単な誘導だけだったんだ。みんなに『斉藤なんて知らない』って言わせ続けた。でも、ある日を境に、マジで誰も斉藤を覚えていない。」
「……でも、お前は覚えてるんだろ?」
「そう、俺だけは……でもな、最近思うんだ。」
佐々木は、恐怖に顔を歪めながら言った。
「俺も、本当に斉藤なんていなかったんじゃないかって。」
第四章:消えた存在
佐々木は、その日以来、授業に来なくなった。
心配になり、彼の家を訪ねた。
インターホンを押しても、応答はない。
隣の住人に聞いてみた。
「佐々木? 誰のことですか?」
ゾッとした。
俺は大学のクラスメイトに聞いた。
「佐々木? そんなやついたっけ?」
スマホの連絡先を確認すると――
佐々木の名前が、どこにもなかった。
結末:最後の記録
俺は佐々木の実験ノートを持ち帰っていた。
震える手で最後のページをめくると、そこにはたった一行だけ書かれていた。
「被験者D(俺)も、佐々木の存在を忘れ始めている。」
そして、最後に――
「次は、お前の番だ。」
その文字を見た瞬間、頭が真っ白になった。
「……誰の、番だ?」
佐々木? 斉藤? それとも、俺?
記憶が、曖昧になっていく――。
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