怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

書き換えられた記憶 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「え、何言ってるの? 最初からそうだったじゃん。」

友人の言葉に、背筋が凍った。

確かに違ったはずなのに、みんなの記憶が書き換えられている。

ただの勘違いだろうか? それとも――

俺以外の世界が、勝手に変えられているのか?

第一章:些細な違和感

最初の違和感は、会社の同僚との会話だった。

「お前、昨日の飲み会、結局来なかったよな?」

「いや、行っただろ。お前とも話したし。」

「何言ってんだ? 最初からお前はいなかったぞ?」

スマホの写真を確認すると、確かに俺の姿はない。

SNSにも、「昨日の飲み会、楽しかったな!」 という俺宛のメッセージはなかった。

でも、俺は確かに行った。

みんなと乾杯して、酔っ払った先輩の話に笑って――

……あれ? 俺、本当に行ったんだっけ?

記憶が曖昧になっていく。

でも、このときはまだ、ただの思い違い だと思っていた。

第二章:家族の記憶が違う

次に違和感を覚えたのは、実家に帰ったときだった。

「ただいまー。」

リビングで母がテレビを見ている。

「おかえり。仕事は見つかったの?」

「……今日は休みだけど?」

母の顔が曇る。

「休み? あんた、ずっと無職でしょ?」

「は?」

「もう何年も働いてないじゃない。いい加減にしなさいよ。」

意味がわからなかった。

俺は会社員だ。ちゃんと働いている。

財布から社員証を取り出して見せようとする。

でも――

社員証が、どこにもなかった。

「そんなの、最初から持ってないじゃない。」

母の言葉が、妙に冷たく感じた。

スマホのスケジュールを確認する。

……空白だった。

俺の「仕事」に関する記録が、どこにもなかった。

第三章:存在が消されていく

それから、俺の過去が少しずつ書き換えられていった。

学生時代の友人に連絡すると「誰?」と言われる。
SNSのアカウントが消えている。
幼馴染の親友に会いに行くと、「お前なんか知らない」と言われる。
俺のことを覚えている人が、どんどん減っていく。

「おかしい……こんなはずじゃない。」

唯一の救いは、俺自身の記憶だけは変わらない ということだった。

でも、このままだと――

本当に「俺」がいなかったことにされるんじゃないか?

第四章:何かが俺を消そうとしている

ある夜、古いアルバムを引っ張り出した。

卒業写真、修学旅行の記念写真、家族との思い出。

どれも、どこにも――

俺が写っていなかった。

「うそだ……。」

震える手でページをめくる。

見覚えのある写真たち。

でも、そこにいるべき俺だけがいない。

「おかしい……これはおかしい!」

ガタガタと震えながら、アルバムを閉じた瞬間、スマホが鳴った。

画面を見ると、非通知の番号。

恐る恐る出る。

「……聞こえますか?」

抑揚のない、機械的な声。

「あなたは……対象者です。」

「何だよ、対象者って……!」

「あなたの記憶だけが、最後まで残ります。」

「しかし、それも長くは続きません。」

その瞬間、電話が切れた。

ぞくりとした。

何かが、俺を「なかったこと」にしようとしている。

結末:最後の記憶

数日後、俺はとうとう「完全に存在しない人間」になった。

家族も、友人も、職場も――

誰も俺を知らない。

そして、ある日。

朝起きると、鏡の前に立つ自分がいた。

でも――

鏡に映る俺の顔が、ぼんやりと薄れていた。

まるで、俺自身の記憶が消えていくように。



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