目次
プロローグ
「サポート窓口って、本当に繋がらないよな……。」
そうぼやきながら、俺はスマホを握りしめた。
家電の調子が悪くなり、メーカーのカスタマーサポート に電話をかけたのだ。
コール音が響く。
しばらくすると、落ち着いた女性の声が聞こえた。
「お電話ありがとうございます。〇〇サポートセンターです。
本日はどのようなご用件でしょうか?」
普通の対応だった。
だが、この時の俺はまだ知らなかった。
――このサポート窓口が、普通ではないことに。
第一章:妙な対応
俺は、家のインターホンの不具合 について相談した。
「すみません、最近インターホンの調子が悪くて。
勝手にチャイムが鳴るんですよ。誰もいないのに。」
オペレーターは淡々と答える。
「承知いたしました。それでは、お客様のお住まいの住所を確認させていただきます。」
住所を伝えると、しばらく無音が続いた。
「……?」
「お客様、お住まいの地域に、当社の製品は設置されておりません。」
「え?」
「記録には、そのようなインターホンの購入履歴もありません。」
「いやいや、俺、ちゃんと〇〇電機で買いましたよ?」
「申し訳ございませんが、お客様の住所には、どなたもお住まいではないという記録になっております。」
心臓が一瞬止まりそうになった。
「……どういうことですか?」
「こちらの記録では、そのご住所は取り壊し済みの空き地となっております。」
「そんなわけないだろ! 俺、今、そこで暮らしてるんだぞ!」
「申し訳ございません。お客様はサポート対象外となります。」
プツッ――。
電話が切れた。
第二章:不審な来客
サポート窓口の対応に困惑しながらも、とりあえず電話を切った。
「……意味がわからない。」
確かに、俺はここに住んでいる。
家が「取り壊し済みの空き地」なんて、ありえない。
その時――
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
スマホでモニターを見ると、画面には真っ黒な影 が映っていた。
「……誰だ?」
モニターを確認しても、顔は映らない。
まるで、カメラが映し出すことを拒否しているように。
ゾクッとした。
そして、ふとスマホを見ると、さっきのサポート窓口の番号が再び着信していた。
恐る恐る電話に出る。
「……はい?」
「お客様、玄関の鍵を開けないでください。」
オペレーターの声だった。
「え?」
「繰り返します。玄関の鍵を開けないでください。」
「何が――」
ガチャッ。
電話が切れた瞬間、ドアノブがゆっくりと回った。
第三章:空き地の住人
俺は急いで玄関の鍵を確認した。
鍵はかかっている。
でも――誰かが外から強く押している。
「……どなたですか?」
返事はない。
ただ、ドアの向こうから、ゴリッ……ゴリッ……と、何かをこする音が聞こえた。
恐怖に震えながら、もう一度サポート窓口に電話をかける。
「お客様、落ち着いてください。すぐに対応いたします。」
「な、何が起きてるんですか!? 俺の家は空き地じゃない!」
オペレーターの声が少し低くなった。
「……お客様、ご自身の住まいを、一度外からご確認いただけますか?」
その言葉を聞き、窓からそっと外を覗いた。
そして、俺は息を呑んだ。
俺の家は、なかった。
そこにあったのは、ただの荒れ果てた空き地だった。
だが、間違いなく――
俺は今、その「ないはずの家」の中にいる。
結末:最後のサポート
「お客様、落ち着いてください。」
オペレーターの声が妙に遠く感じる。
「……今すぐ、ドアを開けてください。」
「え?」
「お客様は、そこにいるべきではありません。」
ゴリッ……ゴリッ……
ドアの向こうの音が、ますます大きくなる。
「お急ぎください。外に出ないと、取り込まれます。」
「取り込まれる……?」
俺は震える手でドアノブを掴んだ。
そして、思い切って開ける――
目の前に広がっていたのは、空き地だった。
俺の家は、影も形もなかった。
振り返ると、俺が出てきたはずの家は消えていた。
ただ、スマホのサポート窓口の画面には、最後のメッセージが残っていた。
「サポート対応が完了しました。」
それ以来、俺の家は見つかっていない。
そして、俺がどこに住んでいたのかも、誰も覚えていなかった。
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