怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

夜に響く猫の鳴き声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は、数か月前に引っ越してきたばかりのアパートで一人暮らしをしている。

駅から少し離れた静かな住宅街で、夜になると物音ひとつしないほど静かだ。

しかし、ある夜から奇妙な現象が起こり始めた。

それは、猫の鳴き声。

【深夜の鳴き声】

最初に気づいたのは、引っ越してきて一週間ほど経った頃だった。

夜中の2時過ぎ、突然どこからともなく「ニャア……ニャア……」と、か細い鳴き声が聞こえた。

「近所の野良猫かな?」

最初は特に気にしなかった。

しかし、次の夜も、その次の夜も――決まって深夜2時に鳴き声が聞こえる。

それはまるで、私の部屋の近くで鳴いているかのように。

【違和感】

ある晩、気になってベランダのカーテンをそっと開けてみた。

しかし、そこには何もいない。

アパートの駐車場にも、隣の建物の屋根にも、猫の姿は見えなかった。

だが――鳴き声は確かに聞こえていた。

「ニャア……ニャア……」

まるで、私のすぐ後ろから聞こえてくるように。

思わず振り向いたが、当然誰もいない。

背筋にぞわりと寒気が走った。

【近づいてくる鳴き声】

その日以来、鳴き声はどんどん近くなっていった。

最初は外から聞こえていたのに、次第に部屋の壁の向こう側から聞こえるようになった。

そしてある日――ついに、部屋の中で鳴いた。

「ニャア……ニャア……」

私は息をのんだ。

壁の中から聞こえるわけでもなく、外からでもなく――

明らかに、部屋の中に“何か”がいる。

【猫の正体】

恐る恐る、スマホのライトをつけ、部屋の隅々まで確認した。

ベッドの下、クローゼットの中、キッチンの影――どこにも猫はいない。

なのに、確かに「ニャア……ニャア……」と鳴き声は続いている。

すると、ふと視界の端に違和感を覚えた。

部屋の隅にある、クローゼットの扉がわずかに開いている。

心臓が高鳴る。

私は、確かに扉を閉めていたはずなのに――。

【エピローグ】

私は恐る恐るクローゼットの扉を開けた。

――しかし、そこには何もいなかった。

鳴き声も、ピタリと止んでいた。

以来、あの猫の鳴き声は聞こえなくなった。

ただひとつ、不可解なことがある。

次の日、私は何気なくベランダに出てみた。

すると、ベランダの端に、小さな猫の足跡が残っていた。

それは、まるで――

「ここにいたよ」と、私に伝えるように。

もし、夜中に猫の鳴き声が聞こえたら――

それは本当に外から聞こえているのか、確かめないほうがいいかもしれない。



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