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大人になって見つけた秘密基地 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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子どもの頃の秘密基地

小学生の頃、俺たちには秘密基地があった。

近所の裏山にある、大きな木の根元にぽっかりと空いた洞穴。
大人たちは「入るな」と言っていたが、子どもにとっては探検心をくすぐる最高の遊び場だった。

俺と親友のタカシは、そこを自分たちの基地にした。

拾ってきた木の板で入口を塞ぎ、ダンボールで椅子や机を作る。
「ここは俺たちだけの秘密基地だ」
そう言って、俺たちはそこで何度も遊んだ。

しかし、小学5年生のある日を最後に、その基地へ行くことはなくなった。

ある日、いつものように秘密基地へ行くと、そこに知らない男の子がいたのだ。

「誰?」

俺がそう聞くと、その子はニコッと笑って、

「ここは、ずっと僕の家だったんだよ」

と言った。

俺とタカシは驚いたが、なんとなくその子と仲良くなり、一緒に秘密基地で遊ぶようになった。

だが、その子は名前を教えてくれなかった。
どこに住んでいるのか聞いても、「この近くだよ」としか言わなかった。

そして、ある日、その子はこう言った。

「僕、もうすぐいなくなるんだ」

「え?」

「だから、秘密基地、君たちに返すね」

俺とタカシは「なんのこと?」と顔を見合わせたが、その日を最後に、その子は現れなくなった。

不思議に思いながらも、俺たちは次第に秘密基地へ行かなくなり、中学に上がるころにはその存在すら忘れてしまっていた。

大人になって見つけた秘密基地

時は流れ、俺は30代になった。

仕事のストレスが溜まり、ふと昔のことを思い出した。

「そういえば、あの秘密基地、まだあるのかな?」

休日、久しぶりに実家に帰り、裏山へ足を運んだ。

昔の記憶を頼りに進んでいくと、驚いたことに秘密基地はまだあった。

さすがにボロボロになっていたが、木の板の入口や、俺たちが持ち込んだ道具が残っていた。

懐かしさを感じながら洞穴に入り、奥へと進んでいくと――

そこで俺は、目を疑った。

洞穴の奥に、小さな木箱があったのだ。
手に取ると、それは見覚えのある箱だった。

「……これ、俺とタカシが秘密基地に隠したやつだ」

小学生のころ、基地に宝箱として置いておいたものだ。

懐かしさと興奮で胸が高鳴った。
そっと箱を開けると、中には色褪せたノートが入っていた。

そのノートには、こう書かれていた。

「君たちが戻ってくるのを待ってたよ」

心臓が跳ね上がった。

さらにページをめくると、幼い字でこう書かれていた。

「僕は、やっぱりいなくなったみたい。でも、君たちは覚えていてくれる?」

俺は、あの日のことを思い出した。

あの名前も知らない男の子のことを。

そして最後のページには、こう記されていた。

「また、遊びに来てね」

俺はそっとノートを閉じた。

そして静かに、木箱を元の場所へ戻した。

今度、タカシと一緒に来よう。

秘密基地は、まだ俺たちを待っている気がする。



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