目次
大切なぬいぐるみ
小学生の頃、私には大切にしていたぬいぐるみがあった。
名前は「モコ」。
白くてふわふわのクマのぬいぐるみだった。
誕生日に母からもらったもので、寝るときも遊ぶときも、どこへ行くにも一緒だった。
特に、嫌なことがあった日や、落ち込んだ日はモコを抱きしめると安心できた。
まるで、モコが優しく慰めてくれているようだった。
突然の別れ
ある日、学校から帰るとモコがいなくなっていた。
家じゅう探しても、どこにもない。
母に聞いても「片付けたりはしていないよ」と言うし、
兄に聞いても「知らない」とそっけない返事だった。
寝る前には確かにベッドの上にいたはずなのに……
私は泣きながら、モコの名前を呼び続けた。
それでも、モコは見つからなかった。
忘れられない感覚
月日が流れ、中学生になった。
新しい友達もでき、部活に夢中になり、
気づけばモコのことを思い出すことはほとんどなくなっていた。
けれど、時々――
夜、眠る前になると、ふとモコを抱きしめたくなる感覚が蘇ることがあった。
まるで、すぐそばにモコがいるような、不思議な感覚だった。
モコの帰還
高校生になったある日、部屋の大掃除をしていると、
押し入れの奥から、小さな箱を見つけた。
古びた紙に包まれた箱の中には――
モコがいた。
「え……?」
驚いて手に取ると、ふわふわの感触が懐かしかった。
でも、何かがおかしい。
真っ白だったモコの毛並みは、うっすらと灰色がかっていて、
どこか少し、小さくなった気がする。
そして――
モコを抱きしめた瞬間、はっきりと“声”が聞こえた。
「おかえり、約束通り戻ってきたよ。」
夢か現実か
私は、モコをぎゅっと抱きしめた。
不思議と、涙がこみ上げてきた。
「どこに行ってたの……?」
問いかけても、モコはもう何も言わない。
ただ、ふわりと温かさだけが伝わってきた。
それからしばらく、モコは私の部屋にいた。
でも――
ある朝目覚めると、モコは再び消えていた。
もう、どこを探しても見つからなかった。
ぬいぐるみの役目
それから数年が経ち、大人になった今でも、時々思うことがある。
モコは、私に必要なときだけ、戻ってきたのではないか?
私が寂しくてどうしようもないとき、そばにいてくれたのではないか?
ぬいぐるみには、持ち主を守る役割があると聞いたことがある。
もしかすると――
モコは私が本当に必要としていたとき、そばにいてくれたのかもしれない。
そして、もう大丈夫だと判断したから、またどこかへ行ったのかもしれない。
もしまた会えるなら、そのときは、ちゃんと「ありがとう」と伝えたい。
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