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白い空間の取引 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

夢を見る。

真っ白な空間 に立っている。

地面も、天井も、壁もない。ただ、果てしなく続く白い世界。

そこで、俺はいつも「誰か」と対峙している。

しかし――

目覚めたときには、夢の内容を覚えていない。

第一章:繰り返される夢

それは、特に疲れている日の夜に決まって見る夢だった。

どこまでも広がる白い空間。

俺はそこで、漠然とした存在と会話をしている。

ただ、その内容を一切思い出せない。

「変な夢だったな……。」

最初は気にしていなかった。

しかし、ある日、友人と話していたときに妙なことを言われた。

「お前さ、最近ちょっと雰囲気変わったよな。」

「え? そうか?」

「なんていうか……別人みたい。」

そう言われても、俺には全く自覚がなかった。

第二章:白い空間の正体

ある晩、俺はまたあの夢 を見た。

だが、今回は違った。

俺は、目の前の「何か」と話している言葉をはっきりと理解していた。

「そろそろ、次の移譲を決める時期ですね。」

その声は、どこからともなく響いていた。

「移譲……?」

「ええ。あなたは、すでにいくつかの“もの”を手放しています。」

俺は、ふと疑問に思った。

「何を手放した?」

「あなたは、もうそれを覚えていないでしょう。」

思い返してみるが、何も思い出せない。

だが、確かに何かが欠けている気がする。

第三章:何を失ったのか

目が覚めたあと、俺は違和感を抱いた。

スマホの写真を見返していたとき、あることに気づく。

「……誰か足りない?」

数年前の写真。友人たちと写っているはずなのに、一人分の空間がぽっかりと空いている。

違和感がある。

だが、思い出せない。

「ここに誰がいた……?」

頭を抱えて考えるが、まるでその記憶が白く塗りつぶされたように思い出せない。

その夜、俺は再び白い空間 にいた。

「あなたは、また一つ、大切なものを“移譲”しました。」

「……俺は、何を失った?」

「知る必要はありません。」

その瞬間、再び意識が途切れた。

第四章:繰り返される取引

ある日、職場で同僚と話していると、彼がこんなことを言った。

「お前、前からこんな仕事できたっけ?」

「どういう意味だ?」

「いや……前はもっとポンコツだったろ?」

確かに、最近仕事がスムーズに進むようになっていた。

気づけば、苦手だったことがなくなっていた。

代わりに――

俺は、大切な記憶を失っている。

もしかすると、俺は夢の中で「何か」を引き換えに、別の何かを得ているのではないか?

結末:最後の取引

夢の中。

白い空間に、再び俺はいた。

「あなたは、最後の移譲の準備が整いました。」

「……最後?」

「次の取引をすれば、あなたは“完全に新しい存在”となります。」

「……俺は、何を差し出して、何を得るんだ?」

「あなたはすでに決めているはずです。」

俺はふと、今までの記憶を思い出そうとした。

だが、すでにほとんどの記憶が欠落していることに気づく。

「……俺は、一体誰だったんだ?」

その瞬間、目が覚めた。

白い天井が見える。

――自分の名前が、思い出せなかった。



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