仕事帰り、私はいつも通りバスに乗った。
都内の喧騒を離れた住宅街行きの路線バス。ほとんどの乗客は、仕事帰りの会社員や学生ばかりで、特に変わったことはない。
しかし、その日は少しだけ違っていた。
目次
不思議な車内
バスに乗ると、なんとなく空気が重い気がした。
乗客の顔ぶれを見渡すと、どこか違和感がある。
みんな、静かすぎるのだ。
普通ならスマホをいじったり、友人と話している人がいるはずなのに、乗客は皆、一様に前を向いたまま微動だにしない。
まるで、人形のようにじっと座っている。
私は少し落ち着かなくなりながらも、気のせいかもしれないと自分に言い聞かせた。
バスはいつも通り発車し、夜の道を進んでいく。
見知らぬ景色
しばらく窓の外を眺めていたが、気がつくと見覚えのない場所を走っていた。
「……あれ?」
いつもなら通るはずの交差点を過ぎても、バスは停車しない。
「運転手さん、ルート変わったんですか?」
私は前方に声をかけた。
しかし――
運転手は、一言も返事をしなかった。
それどころか、バックミラー越しにチラリと視線を向けたきり、また前を向いたまま動かない。
異様な空気に、私は背筋が冷たくなった。
降りられないバス
ふと、スマホで現在地を確認しようとしたが、圏外になっていた。
こんな場所で電波が入らないことなんてないはずだ。
次の停留所で降りよう。そう思い、次のバス停を待つ。
だが――
バスは、どこにも停車しなかった。
いくつもバス停を通り過ぎているのに、誰も降りようとしないし、運転手も止めようとしない。
私は慌てて降車ボタンを押した。
ピンポーン
音は鳴った。しかし、バスは止まらない。
運転手に「降ろしてください!」と声をかけるが、やはり無反応。
それどころか――
車内の乗客全員が、一斉にこちらを向いた。
終点はどこ?
異様な沈黙が、バスの中を支配する。
乗客たちは、無表情のまま、じっと私を見つめていた。
私は恐怖に駆られ、立ち上がってバスの後方ドアを無理やり開けようとした。
だが、ドアはびくともしない。
そのとき、車内アナウンスが流れた。
「次は……終点です。」
終点?
私は、このバスの終点がどこなのか知らなかった。
というか――
このバスは、本当に私が乗るはずだった路線だったのか?
最後の車内放送
バスはどこまでも走り続けた。
外は闇に包まれ、窓の外には何も見えない。
そして、再び車内アナウンスが流れた。
「終点に到着しました。」
その瞬間、バスの天井の電気が一斉に消え、私は何かに引きずり込まれるような感覚に襲われた。
気がつくと
「……お客さん?」
目を開けると、私はバスの座席に座っていた。
目の前には、普通の運転手が立っていた。
「終点ですよ。降りないと、車庫に戻っちゃいますよ?」
周囲を見渡すと、バスの車内にはもう誰もいなかった。
私は慌ててバスを降りる瞬間、、、見てしまった。
窓ガラスに、先ほどの「無表情な乗客たち」が映り込んでいるのを。
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