怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

イヤホンの向こう側 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

俺は音楽を聴きながら通勤するのが習慣だ。

電車の中でも、歩いているときでも、イヤホンをつけていると周囲の雑音が消えて落ち着く。

しかし――

その日から、俺はイヤホンをつけることができなくなった。

第一章:聞こえるはずのない音

いつも通り、電車に乗り込み、スマホをポケットから取り出す。

イヤホンを耳に装着し、プレイリストの再生ボタンを押した。

静かに音楽が流れ始める。

ところが――

曲の合間に、何か聞こえた。

「……ぁ……た……」

「……え?」

ノイズかと思った。

一時停止すると、電車の車内放送が聞こえるだけで、異常はない。

もう一度再生する。

すると――

「聞こえてますか?」

ゾクリとした。

確実に、人の声が混じっている。

第二章:原因不明の声

イヤホンの不調かもしれないと思い、新しいものに買い替えた。

だが、それでもまた声が聞こえる。

音楽を流すたびに、誰かの声が小さく混じっている。

「……聞こえてるなら、返事をして……」

最初はかすかだったが、徐々に明瞭になっていく。

怖くなり、イヤホンを外した。

その瞬間、背後から――

「……なんで、外すの?」

耳元で囁くような声がした。

第三章:記録されていた音声

あまりに気味が悪かったので、イヤホンの音を録音してみることにした。

スマホの録音アプリを起動し、音楽を流しながら録音ボタンを押す。

30秒ほど録音し、イヤホンを外して再生してみた。

最初は普通の音楽が流れていた。

だが、30秒の終わり頃、背筋が凍る音が入っていた。

「やっと気づいた……」

録音を止めた。

手が震える。

俺はすぐにスマホを投げ捨てた。

しかし――

イヤホンをしていないのに、耳元でその声が聞こえた。

第四章:もう手遅れ

それ以来、俺はイヤホンをつけられなくなった。

だが、イヤホンを使わなくても――

耳元で声が聞こえるようになってしまった。

「どうして、気づいてくれなかったの……?」

「ずっと、ずっと、呼んでいたのに……」

そして、気づいた。

スマホのロック画面に、見たことのない通知が表示されている。

「イヤホンを接続してください。」

その瞬間、耳元で囁かれた。

「ねえ、早くつけて?」

イヤホンは、机の上に置いたままだった。

なのに、ケーブルの先端が、ゆっくりと俺の方へ動き出した。



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