目次
仕事で使う画像
俺はWebデザイナーとして働いている。
毎日のようにクライアントの要望に沿ってサイトを作成し、画像素材を探すのが日課だ。
特に、フリー素材のサイトにはよくお世話になっている。
写真、イラスト、アイコン……無料で使えるものが多く、便利だからだ。
ある日、クライアントから「親しみやすい会社のイメージを表現したい」という要望があり、俺はいつものようにフリー素材サイトでビジネスマンの写真を探していた。
すると、一枚の写真が目に留まった。
「スーツ姿の男性が微笑んでいる写真」
表情は柔らかく、いかにも「親しみやすい会社の社員」という雰囲気だ。
「これ、ちょうどいいな」
さっそくダウンロードし、サイトのメインビジュアルとして使用することにした。
その時は、何の違和感もなかった。
どこにでもいる男
しかし、その後も仕事でフリー素材を探すたびに、同じ男の写真を何度も目にするようになった。
スーツ姿で微笑む男。
別のポーズ、別のシチュエーション、そして別のフリー素材サイトにも、何度も現れる。
「まあ、よくあることか……人気のあるモデルなんだろう」
そう思い、特に気にしないようにしていた。
ところが、数日後、俺はとんでもないことに気づいてしまった。
この男、どんなフリー素材のシチュエーションにも存在しているのだ。
「楽しくピクニックをする家族写真」
→ 父親役として微笑む男。
「オフィスでプレゼンをするビジネスマン」
→ スーツ姿でジェスチャーをする男。
「医師が患者に説明をするシーン」
→ 白衣を着た医者の姿で写る男。
一人のモデルが、こんなにも様々な場面で使われているのは異常だった。
気味が悪くなった俺は、試しに「スーツの男性 フリー素材」で検索してみた。
結果は……
どのページにも、必ずこの男が写っていた。
監視されている?
不安になった俺は、ふと思い立ち、会社のサイトを確認した。
俺が作ったサイトのメインビジュアルの男――。
その顔を、改めてじっくり見てみる。
「……?」
おかしい。
少し前に見たときと、表情が違う気がする。
確かに柔らかい微笑みだったはずなのに、今はどこか……不自然な笑顔だ。
違和感を覚えながらも、さらに画面を凝視すると――
男が、俺の方を見ているような気がした。
まるで、俺のことを知っているかのような視線。
怖くなった俺は、すぐに別のフリー素材に差し替えた。
だが、翌日。
クライアントから「前の画像の方が良かった」と言われ、元の男の画像に戻すよう指示された。
仕方なく元に戻すと、やはり男の表情が微妙に変わっている気がする。
その夜、夢を見た。
俺は、真っ白な部屋の中に立っていた。
目の前には、スーツ姿のあの男がいる。
男は俺を見つめながら、微笑んでこう言った。
「僕を消さないでください」
いなくならない男
翌日、恐怖を感じながら会社へ向かった俺は、すぐにクライアントに連絡し、画像を変更させてほしいと頼んだ。
だが、クライアントは不思議そうに言った。
「え? でも、あの写真の男性……あなたにそっくりですよね?」
「……え?」
ゾッとして、すぐにサイトを開く。
そこに映っていたのは――
昨日までの「スーツ姿の男」ではなかった。
俺だった。
信じられないことに、俺がモデルとして微笑んでいる。
慌ててフリー素材サイトを検索すると、そこにも俺の写真が大量にアップされていた。
それは、確かに俺なのに……
俺は、そんな写真を撮られた記憶がない。
フリー素材の呪い
今も、ネット上には俺の顔が大量に出回っている。
俺はフリー素材のモデルになった覚えはないのに、どのサイトにも俺の顔がある。
そして、ある日――
パソコンの画面に奇妙なエラーメッセージが表示された。
「あなたはすでに登録されています」
俺はこのまま、どこにでもいる「フリー素材の男」になってしまうのかもしれない。
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