怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

不思議なバスに乗ってしまった 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

会社帰り、私は終バスに乗った。

残業が長引き、電車の最終にも間に合わなかったため、仕方なく深夜バスを使うことにしたのだ。

バス停には誰もいなかったが、程なくして真っ黒なバスがゆっくりと滑るように停車した。

「……こんなバス、あったっけ?」

違和感を覚えたが、疲れていた私はあまり気にせず乗り込んだ。

【奇妙な車内】

バスの中には、乗客が誰もいなかった。

深夜とはいえ、他に誰もいないのは珍しい。

運転手は帽子を深くかぶっており、顔がよく見えない。

「◯◯行き?」と確認すると、運転手は無言でコクリと頷いた。

仕方なく、私は後方の座席に腰を下ろした。

バスは静かに走り出した。

【車窓の違和感】

走り出してしばらくして、私はあることに気づいた。

窓の外の景色が変わらない。

街灯も、コンビニも、住宅街も――ずっと同じ景色が続いている。

「……おかしいな。」

乗車してからもう20分以上経つのに、バスはまるで同じ場所をループしているようだった。

それに、どれだけ走っても他の乗客が乗ってこない。

私は不安になり、運転手に声をかけようと前方へ向かった。

しかし――

運転手の姿が消えていた。

【幽霊の乗客】

「えっ……?」

ハンドルは勝手に動き、バスは速度を落とすことなく走り続けている。

それどころか――

後方の座席に、いつの間にか“誰か”が座っていた。

最初は気づかなかった。

だが、よく目を凝らすと、車内の座席の奥に黒い影が並んで座っている。

乗ったときには誰もいなかったはずなのに。

しかも、彼らは微動だにせず、まったくの無音。

私は恐る恐る、一番近くに座る“人影”を覗き込んだ。

――そこには、目も鼻も口もない、真っ白な顔があった。

【降りるべき場所】

「ダメだ……このバス、降りなきゃ。」

私は慌てて降車ボタンを押した。

すると――

ブザーは鳴らない。

バスは止まる気配もなく、むしろスピードを上げていく。

私は半狂乱になりながら、窓を叩き、ドアの前に立って必死に開けようとした。

そのとき――

「次、降りますか?」

背後から、ぞっとするほど冷たい声がした。

振り向くと、いつの間にか運転手が立っていた。

いや、あれは……運転手だった“何か”だ。

私は声も出せず、必死に頷いた。

すると、バスは急に減速し、ギギィィ……と重たい音を立てながら停車した。

【エピローグ】

バスから飛び降りるようにして外へ出ると、そこは見覚えのある町だった。

私は急いで振り返った。

だが、バスはどこにもなかった。

バス停に立っていたのは、古びた看板だけ。

「このバス停、もう10年以上前に廃止されたはずだぞ?」

知らない男性が、不思議そうに呟いていた。

私はそれ以上何も言えず、震える手でスマホを取り出した。

時刻は午前3時。

私は――いったい、どこへ連れて行かれるところだったのだろうか?

そして、あのバスの“乗客”は、一体どこへ向かっていたのか。

もしあなたが深夜、見覚えのないバスを見かけても――

決して乗ってはいけない。

それは、あなたを“この世ではないどこか”へ連れて行くバスかもしれないから。



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