怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

剥がしてはいけないお札 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

新しく借りたアパートは、築年数の古い物件だったが、家賃が安く、駅も近い。

「まあ、多少古くても問題ないだろう。」

そう思いながら引っ越し作業を進めていたが、部屋の隅に奇妙なもの を見つけた。

――壁の隅に、古びた「お札」が貼られていたのだ。

第一章:不気味な張り紙

お札は黄色く変色し、ところどころ破れかけていた。

ただ、文字はかろうじて読める。

「決して剥がすな」

「……なんだよ、これ。」

オカルトとか全く信じない俺だったが、さすがに気味が悪い。

「まあ、こういうのは前の住人の趣味だろう。」

そう思い、そのままにしておいた。

だが、その夜――

壁の向こうから、何かを引っかく音が聞こえた。

第二章:異変

最初は気のせいかと思った。

だが、次の日も、また次の日も、夜になるとカリカリと壁を引っかく音が聞こえる。

「ネズミか……?」

そう思い、管理会社に連絡したが、「このアパートでネズミが出たことは一度もない」 と言われた。

それどころか、電話口の担当者は何かを言いかけて、途中で黙り込んだ。

「……あの、お札って、剥がさないほうがいいですよ。」

俺はその言葉が引っかかったが、それ以上は深く考えなかった。

しかし、その夜、決定的な出来事が起こった。

第三章:剥がれたお札

寝ていると、突然バサッという音がした。

驚いて飛び起き、電気をつけると――

あのお札が、床に落ちていた。

「……え?」

風もないのに?

貼り直そうと手に取った瞬間、背筋が凍った。

お札に、無数の黒い手形がついていた。

それだけじゃない。

お札が貼られている壁のまわりが、不自然に黒ずんでいた。

まるで、長い間“何か”がその奥に押し込められていたかのように。

第四章:開いた穴

次の日、管理会社に事情を話すと、担当者は動揺した様子でこう言った。

「……すぐに部屋を出たほうがいい。」

「え?」

「その部屋……過去に何人か住んでたんですが、全員、奇妙な理由でいなくなったんです。」

「どういうことですか?」

「共通しているのは、全員がお札を剥がしたあとに姿を消した ということです。」

心臓が高鳴る。

「……いや、でも俺はまだここにいるじゃないですか。」

「今すぐ逃げてください。今すぐに――」

その瞬間、電話がブツッと切れた。

そして、耳元で囁くような声が聞こえた。

「……見つけた」

結末:消えた住人

翌朝、俺の部屋のドアが開け放たれているのを、管理会社の人間が見つけた。

荷物はそのまま。

だが――

俺の姿は、どこにもなかった。

そして、壁には新しいお札が貼られていた。

そこには、こう書かれていた。

「決して剥がすな」

次の住人が、その言葉を守るかどうかは――わからない。



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