怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

双眼鏡が映した秘密基地の影 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

子供のころ、俺たちは「秘密基地」を作った。

場所は町外れの雑木林の奥。

廃墟になった小屋を見つけ、そこを基地として改造した。

仲間内でしか知らない、大切な場所だった。

――だが、大人になった今、もう一度その場所を見たとき、俺はあることに気づいてしまった。

第一章:再訪

大学を卒業し、地元へ戻った俺は、懐かしさからあの秘密基地 を訪れてみることにした。

昔の友人たちはもう別々の道を歩んでいるが、子供のころの記憶が鮮明に蘇る。

「まだ残ってるかな……?」

雑木林の奥へ進むと、そこには当時のままの姿で廃小屋が残っていた。

扉を押すと、ギィ……と軋む音がする。

中には、俺たちが使っていた古びた机や椅子、ダンボール箱がそのままだった。

だが――

机の上には、見覚えのない「双眼鏡」が置かれていた。

第二章:双眼鏡の視界

「誰かが最近まで使っていたのか?」

不思議に思いながらも、その双眼鏡を手に取った。

外に出て、なんとなく、試しに覗いてみる。

レンズ越しに見えるのは、雑木林の向こうに広がる町の風景だった。

しかし――

何かがおかしい。

遠くの公園には子供たちが遊んでいるが、動きが妙にぎこちない。

まるで、何かの人形劇を見ているような、違和感のある動き方をしていた。

気持ち悪くなり、双眼鏡を外す。

普通の風景が広がっている。

「気のせいか……?」

そう思い、再び覗いてみた。

その瞬間、全身が凍りついた。

双眼鏡の視界の中に、「秘密基地の窓から俺を見ている人影」が映っていた。

第三章:見ているのは誰?

「……え?」

慌てて双眼鏡を外して、実際の窓を確認する。

誰もいない。

もう一度双眼鏡を覗く。

やはり、そこには俺をじっと見つめる人影がある。

顔は暗く、輪郭がぼんやりとしている。

だが、確かに「こちらを見ている」のがわかる。

心臓がバクバクと鳴る。

――誰かが、秘密基地の中にいるのか?

第四章:昔の記憶

恐る恐る、小屋へ戻り、奥へ進む。

しかし、誰の姿もない。

代わりに、ボロボロになったノートを見つけた。

それは、昔俺たちが秘密基地の記録 としてつけていた日記だった。

めくると、小学生だった俺たちの他愛ない落書きが残されている。

しかし、最後のページを見たとき、背筋が凍った。

そこには、俺たちの字ではない、大人の筆跡 でこう書かれていた。

「まだ見てるよ」

結末:視線の正体

ノートを閉じ、震える手で双眼鏡をもう一度覗く。

今度は、双眼鏡のレンズのすぐ前に、何かの顔が映った。

息を呑む間もなく、視界が真っ暗になり――

気づけば、俺は秘密基地の外に倒れていた。

あれから、俺は二度と秘密基地には近づいていない。

あの双眼鏡は、何を映していたのか。

俺たちが作ったはずの秘密基地には、最初から俺たち以外の「何か」がいたのではないか?

今でも時々、夢の中であの基地にいる自分を思い出す。

そして、夢の中の俺は、双眼鏡を覗いている。

そこに映るのは――

俺自身を見つめる、もう一人の俺だ。



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