目次
空き家の片付け
俺の父方の実家は、田舎にある築100年以上の古い家だった。
祖父が亡くなった後、長らく空き家になっていたが、ついに取り壊すことが決まり、俺と父は片付けを手伝うことになった。
家はひどく傷んでおり、雨漏りや壁のひび割れが目立つ。
埃っぽい空気の中、父と一緒に家具や古い荷物を整理していると、ふと気になるものを見つけた。
それは、家の柱や扉の上に貼られた無数のお札だった。
剥がしてはいけないもの
お札は薄汚れた和紙に達筆な文字が書かれており、どれもかなり古そうだった。
「なんか気味悪いな……」
俺がそう呟くと、父はお札を見て少し顔をしかめた。
「……たぶん、おじいちゃんが貼ったんだろうな」
「何のお札なんだ?」
「さあな。ただ、こういうのはあまり触らない方がいいぞ」
父はそう言って気にせず作業を続けたが、俺はどうしても気になった。
「お札なんてただの紙だろう」
そう思い、一枚だけ剥がしてみることにした。
異変の始まり
お札を剥がすと、そこには小さな穴が開いていた。
木材が削れたような跡があり、何かを埋めた形跡がある。
「なんだ、これ……?」
覗き込んでも暗くてよく見えない。
「おい、何やってるんだ?」
父が声をかけてきたので、俺は慌てて剥がしたお札をポケットに突っ込んだ。
その夜、俺は奇妙な夢を見た。
夢の中で、俺はあの穴を覗き込んでいる。
すると、暗闇の奥から何かがこちらを見ている気配がした。
──「見つかった」
低く囁くような声が聞こえた瞬間、俺は飛び起きた。
部屋の隅で、剥がしたお札がカサリと音を立てた。
広がるひび割れ
翌朝、妙な胸騒ぎを覚えながら再び古い家へ向かった。
家に入ると、昨日剥がしたお札のあった場所に目を向けた。
──そこには、新たなひび割れができていた。
それも、昨日より大きくなっている。
「……こんなひび、昨日あったか?」
父に聞いても、「知らん」としか言わない。
だが、その日から家のあちこちの壁にひびが広がり始めた。
まるで、何かが家の中から出てこようとしているかのように……。
扉の向こう
その日の夕方、俺は片付けを続けていたが、ふとある部屋の扉が開いていることに気づいた。
そこは祖父の使っていた書斎で、普段は鍵がかかっているはずだった。
「……誰か開けたのか?」
不思議に思いながら中を覗くと、部屋の隅に何かが立っていた。
──「お前が、剥がしたんだな」
冷たい声が耳元で囁いた瞬間、俺の体は動かなくなった。
暗がりの中で、歪んだ顔をした何かがこちらを見ている。
目が合った瞬間、俺は恐怖で声を上げることもできなかった。
祖父の遺した手紙
翌日、俺は熱を出して寝込んだ。
父が心配して家に残っていた荷物を調べていると、祖父の遺した古い手紙を見つけた。
そこには、こう書かれていた。
──「この家の奥に"封じられたもの"がいる。
お札を剥がしてはならない。
もし剥がせば、"それ"は外へ出る」
俺はゾッとした。
昨日見た"あれ"は、封じられていた何かだったのか?
剥がしたお札は、今でもポケットに入れたままだった。
怖くなり、近くの神社でお祓いを受けることにした。
神主に事情を話すと、顔色を変えた。
「それはすぐにお返ししたほうがいい。
お札を元の場所に戻せば、おそらく問題は収まるでしょう」
俺はすぐに家へ戻り、お札を剥がした場所に貼り直した。
その瞬間、家全体がかすかに軋む音を立てた気がした。
まるで何かが、再び閉じ込められたかのように──。
それ以来……
家の取り壊しは予定通り進み、何事もなく更地になった。
だが、それ以来俺は夜中に夢を見ることがある。
──暗闇の中で、扉の向こうからじっとこちらを見ている何か。
──「次は、剥がさせるぞ」
目が覚めると、枕元には見覚えのない古いお札が落ちているのだった。
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