大学進学を機に一人暮らしを始めたとき、実家から持ってきたものがある。
古びたウサギのぬいぐるみだ。
小さい頃からずっと持っていたもので、白い毛並みはすっかりくすんでしまっている。
だが、一番の特徴は――
ガラスのように透き通った黒い目だった。
母は「手作りの特別なぬいぐるみなのよ」と言っていたが、その目だけは不気味なほどリアルで、昔からどこか落ち着かない気持ちになった。
それでも、ずっとそばに置いていた。
だが、一人暮らしを始めてしばらくしてから――
その目が、少しずつ変わっていくことに気がついた。
目次
ぬいぐるみの異変
ある朝、目を覚ましてウサギのぬいぐるみを見ると、違和感があった。
「……なんか、目の位置が違う?」
昨日までは、正面を向いていたはずの黒い目が、わずかに横を向いている気がした。
気のせいだろうと思いながらも、どこかモヤモヤする。
しかし、それから数日後――
今度は目が明らかに動いていた。
前よりもはっきりとこちらを見つめているようになっていたのだ。
「気のせいだ……気のせい……。」
自分にそう言い聞かせたが、その夜、さらに奇妙なことが起こった。
目が合う
夜中、ふと目が覚めた。
薄暗い部屋の中、枕元に置いたウサギのぬいぐるみが見えた。
すると――
ぬいぐるみの目が、ゆっくりと瞬きをした。
「……え?」
息が止まりそうになった。
ぬいぐるみはまばたきをするはずがない。
恐る恐るスマホのライトをつけた。
だが、ぬいぐるみはいつも通りそこにある。
「……夢でも見たのか?」
深く考えないようにして、再び眠ろうとした。
しかし――
目を閉じる瞬間、ウサギの目がこちらに向かって動くのを確かに見た。
黒い目の正体
次の日、いてもたってもいられず、私は実家の母に電話をかけた。
「ねえ……あのぬいぐるみ、何か変じゃない?」
すると、母は少し言いづらそうに答えた。
「……やっぱり気づいちゃった?」
「どういうこと?」
「実はね……あの目、本物なのよ。」
「……え?」
「本物のガラス製の目。でもね、そのガラス……もともとは人間の義眼だったのよ。」
私は言葉を失った。
「もともとおじいちゃんの知り合いだった職人さんが作ったぬいぐるみでね……昔、亡くなった人の義眼を使って、ぬいぐるみに“魂を宿す”っていう風習があったらしいのよ。」
「ちょ、ちょっと待って……そんなもの、どうして私に?」
「小さい頃、不思議とそのぬいぐるみを気に入ってたでしょ? だから、持たせたら守ってくれるかと思って……。」
守る?
何から?
電話を切ったあと、私はもう一度ぬいぐるみを見つめた。
その黒い目は、じっとこちらを見つめている。
そして――
かすかに笑ったように見えた。
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